12話 ページ12
“本業”とは、物書きの事であり、剣心には言ってあるが、ほとんどは知らない。A自身で言うのも何だが、そこそこ人気のある作家ではある。そうは言っても、旅をしながらの為、不定期に続編が出る程度だから、実際はどのくらい人気なのか、Aはよくわからない。今書いている連続物の終わりが見えてきたから、明日にでも出版社にでも出向くか…と考えながら、書き続けていると、誰かが来る気配がした。一度手を休め、障子を開けると、誰もいなかった。次は心霊を題材にするかと呑気に考えながら障子を閉め、また再開する。もう少しで書き終わるなと思うと、作者であるが故なのか少し寂しくなった。番外編を書くのもありだが、ここは心機一転するほうが良いかも…そう考えながら書くこと一刻ほどの時間が経っていた。恐ろしい物だと毎回思う…なのに、決まって相当時間が経っている。困ったものだと思いながらも、書き上げた原稿を纏める。文机から立ち上がり、伸びをすると折れたのでは?と思わず言いたくなるような音を立てながら、固まった身体をほぐした。さて、剣心のところにでも行って、手伝いをするかと部屋を出る。
『おっ!剣心、手伝うことあるか?』
剣「隼人か。今洗濯物を取り込んでいるから、畳んでくれないか?」
『わかった』
隼人は剣心から乾いた洗濯物を受け取り、畳む、また受け取っては畳むを繰り返す。単純作業ではあるものの、先程までしていたことと比べれば、明らかに楽であった。ある程度畳み終わると剣心は一つの纏まった洗濯物を隼人に渡す。
剣「この洗濯物を弥彦のところに持っていってはくれるか?」
『はいよ』
することも無く、安静にするように恵に言われた弥彦は、素振りもできず暇を持て余していた。すると、部屋の前から隼人の声がする。
『弥彦〜?入って良いか?』
弥「何だよ?」
弥彦はそう言って障子を開けると、隼人が弥彦の洗濯物を持っている。何故?と疑問に思う。
弥「何で俺の洗濯物を持ってるんだよ!?」
『剣心に持って行ってくれって頼まれたけど…あっ!年頃だから色々気にすることでもあるのか…』
半笑いで感心しながら言ってくる隼人に腹が立つ弥彦。
弥「そういうのじゃねえよ!」
『隠さなくていいぞ〜。剣心の方がよっぽど面白かったから』
弥「隼人って性格悪いな…思った以上に」
『そうか?今までに会った事のある人で性格が悪かったの一人、二人くらいだけど?』
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作者名：つっさん | 作成日時：2019年10月1日 9時
