【実況者】こんなに好きなのはあなたが初めて【キヨ】 (ページ4)

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第4話ページ4

「あと二駅の我慢...」

Aは俯きながらそう呟くと、またドアの外を見た。
電車が動き始めて数秒後...ふとまた違和感を感じた。
それは腰ではなくその下...

「...！？」

こいつ明らかに触ってるだろ！？そう思いつつドア越しに移る自分の後ろに立つ人物を確認する。
見るとそこには20代後半だろうか...若めのサラリーマンが一人。

『おいおいまじかよ...』

声に出すことができず心の中でつぶやいた。
明らかに痴漢だ。
けどいざという時に限ってなかなか声が出ない。
電車内は静かだし、叫んだところでその人が当たってしまっただけと言った場合、周りや相手にも迷惑をかけるし、自分が恥ずかしい思いをして終わるだけ。
そう考えると余計出せなくなる。
しかし覚悟を決めて思いっきり振り向きざまに...

「おまっ...！！！」

「おい。」

「お前なにしてんだ！！」そう叫ぼうとしたのと同時に、誰かが低い声で言った。

「お前なにやってんの？」

彼はサラリーマンの腕を掴み、Aの言いたかったことをとても低い声で冷静に言い放った。
サラリーマンはみるみる顔が青くなり冷や汗をかいていく。
その時電車四駅目に止まり、サラリーマンはチャンスだとばかりに走って逃げようと。が、彼の手はそれを許さない。

「はいはい逃げない逃げない、行くぞ痴漢野郎。」

そういうと彼はサラリーマンの手を引いて電車を降りようとした。
Aはその光景を口を開けたまま見ていた。
すると、

「悪いけど、君も一応一緒に来て？」

そう彼に言われ、無言で頷き急いで電車から降りた。
こんなこと今まで一度も経験したことがなかったのでどうすれば良いのかわからず、とりあえず彼のあとを追った。

ホームを出て駅のすぐ近くにある警察署へ着くと、彼はサラリーマンを前に突き出して「こいつ痴漢です」とだけ言った。
警察官は奥に来てと言って三人で奥の部屋に向かった。

「えーっと、被害者は君かな？」

警察官の一人に聞かれ慌てて「そうです」と答える。

「何をされたのか...話せるかな？」

「えっと...」

どう説明すれば良いのか困っていると、傍で見ていた彼が口を開いた。

「こいつがこの子のケツ触ってたから、俺がここに連れてきました。」

警察官は、なるほどねと答えるとAに向かって優しく、怖かったねと言った。
正直怖いと思っていなかった為、「え？あ...はい..」と曖昧に答え、少しの質問を受けた後、サラリーマンを残し彼と共に警察署を出た。