59話 ページ9
隊服に着替えたAは、宇髄の屋敷に訪れた。
『もしもーし』
「おや、Aさん」
出てきたのは雛鶴。
やはり忍びは回復も早いのだろう。
「どうかしましたか?」
『ちょっと、先日の件で』
「分かりました、ご案内しますね」
どうも。
と、Aが頭を下げると、屋敷内に入れて貰えた。
「Aさんもけがは大丈夫でした?」
『肋に罅と、左足の骨折と全身打撲はありますけど、それ以外は特に』
「……そうですか」
雛鶴はAの一言に言葉が出なかった。
世間話をしながら宇髄の部屋に着くと、布団に横たわっていた。
『宇髄』
「おー、石黒」
宇髄は起き上がろうとするのを、Aは首を振って止めた。
『あ、寝たままでいいよ。キツイでしょ……』
現段階で上弦の鬼と戦って生還している柱は二人だけ。
挙句、二回も戦っているのは現段階でAだけだ。
「見た目だけだよこんなの」
『……ごめんね、まだキツイ時に』
「いいよ、どうせお前のことだから、鬼殺隊辞める気なんだろ」
Aは宇髄の言葉に黙り込んだ。
そこでAは笑った。
『炭治郎くんたちが入隊した時にさ、甘味処で話した内容、覚えてる?』
「あー?確か……居合が最速だったお前が、自分より速いやつがいるって謙遜したやつか」
『謙遜じゃないんだけど、その話』
Aは前髪を撫でて、昨日の善逸を思い出す。
ほんの少ししか見ていないが、彼はやはり速かった。
「おい、それって」
『……我妻善逸。彼は、私の弟弟子だよ』
Aは笑った。
「おいおい……そんなの今まで」
『雷の呼吸は、五つの呼吸の中でも、最も難しい呼吸。それは事実でね』
Aは昔を思い出した。
壱ノ型以外が使える弟弟子と、壱ノ型しか使えない弟弟子。
二人は仲が悪かった。
『私の弟弟子は、二人いる。
一人は善逸。もう一人別の子がいるんだけど、善逸は知っての通り壱ノ型のみ。
もう一人の子は逆に壱ノ型が使えなかった』
「けど、お前は……」
『そう、私は全ての型が使える。私は適正してたんだと思う。
けど、全ての型が使えるからこそ、私は善逸には負けるのよ』
宇髄は、Aの表情を見て何も言えなくなった。
Aは昔を思い出していた。
壱ノ型しか使えない善逸は、たった一つを極めた。
結果、Aは察した。
『私と違ってあの子は、一を極めた。
結果、その一だけで戦うあの子と複数を使う私では、あの子に負ける』
と、察した。
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やぁと(プロフ) - 柚葉さん» コメントありがとうございます!優しい彼を描けて良かったです。ラストはすごく悩んでできたシーンなので、涙を流していただき感無量でございます。ここまで長々とお付き合い頂きありがとうございました!またの機会がございましたらよろしくお願いしますm(*_ _)m (2021年11月25日 20時) (レス) @page49 id: a03889f26b (このIDを非表示/違反報告)
柚葉(プロフ) - 完結おめでとうございます!実弥さん推しの私ですが、こんな実弥さん大好きです!ラストは涙流しながら読みました。 (2021年11月25日 19時) (レス) @page50 id: 33c3d87eb8 (このIDを非表示/違反報告)
やぁと(プロフ) - 金平糖さん» 再びコメントありがとうございます!どうにか無事に完結を迎えられました!感動的なラストを金平糖様にお届けできて幸いです。長々とお付き合い頂きありがとうございました!またの機会がございましたら、その時もどうぞよろしくお願いしますm(*_ _)m (2021年11月25日 17時) (レス) @page50 id: a03889f26b (このIDを非表示/違反報告)
金平糖 - 完結おめでとうございます。最後の最後でどばーーーっと涙が… 本当に、完結おめでとうございます! (2021年11月25日 17時) (レス) @page50 id: 63ca64d519 (このIDを非表示/違反報告)
やぁと(プロフ) - 実弥&左馬刻&勝己LOVEさん» 原作とはかなり性格違ってるのでは?と申し訳ないと思いながら書いてるのですが、喜んでいただけて幸いです。これからもよろしくお願いしますm(*_ _)m (2021年11月14日 23時) (レス) id: a03889f26b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:やぁと | 作成日時:2021年10月27日 17時