41話 ページ41
全身が震える。
善逸は震えを止めようとするが、Aは黙って待つだけだった。
「えっと、い、行きます!」
『おいで』
善逸は壱ノ型に構えて、Aに向けて放った。
「雷の呼吸、壱ノ型、霹靂一閃」
『……へぇ』
Aはそれを見ると、善逸の腕を掴んで背中に回す。
いきなりの体術に善逸は大声を上げた。
「嫌ァァァァァァ!!!!!」
『ははっ、元気だね』
Aは善逸を放す。
善逸は転がった。
「なんで、ここが、ボロボロなのか、この一瞬で分かった」
『そこまで派手にしてた自覚無いんだけどね』
「え、嘘でしょやだ化け物」
『あっはっはっはっはっ』
Aは大声で笑った。
だが、善逸は目を見開く。
Aからは音が聞こえない。
こういう暴言を聞くと、伊之助は別として普通の人間なら多少なりとも驚きの音がする。
それに対してAからは、それらの音は一切無く、まるで──────
『まぁ、それだけ柱でも追い詰められて、柱だった人でも追い詰められて、結果、やり合ったんだよね、本気で』
「少しは調整して下さらない!?
しのぶさんが可哀想でしょう!?」
善逸は常識感覚が狂ってるAに呆れた。
「でも、それだけ強い鬼だったんですか?柱が二人も出てて……」
『いや、私たちからしたら雑魚鬼でも、あなたたちなら死ぬかもね……』
「ひぇっ!!!!」
『そんな任務は善逸くんたちくらいの階級には出ないから大丈夫よ』
「いや出されましたけど!!思いっきり出されてましたけど!!
那田蜘蛛山!!無限列車!!」
『ああ……あれね』
Aは目を逸らした。
確かに、と思わなくもない。
正直、当時の自分なら死なないという自信はあるが、今みたいに守れるかと聞かれたら無理だ。
『まぁ無事に生きてるのが、充分強いって結果だよ』
「え」
『考えてもみな。
那田蜘蛛山では何十人の隊士が死んで、無限列車でも沢山の隊員が死んだ。
そんな中で、四人は生き残ってるのよ』
「……」
『ね?』
Aの言葉を聞いた善逸は黙り込んでしまった。
それに続きAは善逸の頭を撫でる。
『それに、善逸くんは、禰豆子ちゃんを守り続けた。鬼だって分かっていながらも』
「……」
『本当の怖がりはね、誰かを信じることなんてできない。
たとえ、どんなに優しい音がしたとしても』
そのことに善逸は目を見開いた。
驚いてAを見てみると、Aは笑顔を浮かべているだけだった。
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作者名:やぁと | 作成日時:2021年10月19日 21時