元柱だった隊員【不死川実弥】 (ページ1)

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1話ページ1

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Aは降りしきる雨の中、同僚だった者の墓の前に立っていた。

『……カナエ』

Aは、かつて花柱だった胡蝶カナエの墓の前に立っていた。

墓石に刻まれている彼女の名に手を伸ばした。

『ごめんね』

それだけ言うと、カナエの墓から離れていった。

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Aは誰かの気配を感じ、木刀を振り下ろす腕を止めた。

稽古場の出入口に目を向けると、そこには風柱の不死川実弥が立っていた。

『あら、珍しい』

Aが体ごと実弥を見ると、実弥はため息を吐いた。

「テメェのその格好は何とかなんねぇのか」

Aの現在の格好。

さらしが巻かれた胸に、何も羽織っておらず、

流石に下は他の隊員たちと変わらない格好ではあるが。

『え？今更じゃない』

実弥が目のやりどころに困っていると、Aは笑った。

実際、彼女は気にしていない。周りは気にするが。

これだけは実弥が嫌っている水柱とも同意見である。

「チッ」

『すーぐ舌打ちしてる』

「笑い事じゃねぇんだよ。
……手が足りねェ、力貸せェ」

実弥のそういう態度に、Aが驚く。

『……あんた、頼み事とか出来たんだ』

「いっぺん死ぬかァ？」

『お断りします！』

Aは笑うと、適当に放り投げてた隊服の上着を羽織り、日輪刀を腰に差す。

すると木刀は元の位置に戻して、履物を履いた。

『で、今度は何？』

「柱二人が殉職したァ」

『相手は？』

「一人下弦だ」

『……』

「隊員を庇ったらしい」

『そう……』

「一人は原因不明。
今も捜索中だ」

Aが誰かを思い浮かべながら、二人で道場の門をくぐる。

町には人が行き交っていて、Aはその様子を見た。

『……分かった、手伝うよ』

「頼んだァ」

『どこを見ればいいの』

「南南西だ」

『分かった』

それだけ伝えると、二人は別々の方向に進む。

瞬く間に姿を消した二人に、町人は気づかなかった。