13話 ページ13
「御館様！証明しますよ俺がァ！
鬼というものの醜さを！」
「実弥……」
皆が緊張した様子で、実弥を見守る。
実弥が踏みつけている木箱から、呻き声と爪で引っ掻く音が聞こえる。
『実弥…』
「Aは黙っとけェ」
『っ……』
「禰豆子ぉぉぉ！！！」
「不死川、日向ではダメだ。
日陰に行かねば鬼は出てこない」
「御館様、失礼仕る！」
伊黒の言葉を聞いた実弥は木箱を持って室内に入り込んだ。
実弥が木箱を何度が刺し、その間、伊黒が炭治郎の肺を圧迫した。
実弥が木箱を開けると、中から髪の長い女の子、正しくは鬼で、炭治郎の妹の禰豆子が出てきた。
Aはゆっくりと立ち上がる。
『実弥…』
いつでも、止められるように。
成り行きを見守る。
実弥の血が滴る音と、禰豆子の堪える呻き声が響く中、しのぶが伊黒に言う。
「伊黒さん、強く抑えすぎです。少し弛めてください」
「動こうとするから強く抑えているだけだが？」
「竈門くん、肺を圧迫されている状態で呼吸を使うと、血管が破裂しますよ」
隣がそう騒いでいると、Aは顔をしかめる。
だが、実弥と禰豆子が一触即発の中、炭治郎が叫び声を上げた。
「竈門くん！」
しのぶの方が炭治郎を呼ぶと、炭治郎は腕を拘束している縄を引きちぎる。
伊黒が驚いたその時、冨岡が伊黒の腕を掴み上げた。
その瞬間炭治郎は走り出し、縁側から禰豆子を呼ぶ。
禰豆子は何を思ったのか、少し唸ったかと思うと、そっぽ向いた。
その瞬間、全員が驚いた。
全員、禰豆子が実弥を襲うと思ったから。
その様子をひなきとにちかから聞いた御館様は告げる。
「ではこれで、禰豆子が人を襲わないという証明ができたね」
Aは実弥から炭治郎に顔を向けた。
「炭治郎、それでもまだ禰豆子のことを快く思わない者も居るだろう。
証明しなければならない。
これから、炭治郎と禰豆子が鬼殺隊として、戦えること。役に立てること。」
その言葉を聞いた炭治郎は咄嗟に御館様に頭を下げた。
(――なんだろう、この感じ。ふわふわする。
声、この人の声のせいで、頭がふわふわするのか)
そのやり取りの横で、Aは室内にいる実弥の横に立ち、実弥の背中に手を当てた。
たったそれだけでAは涙が溢れそうになる。
すると、炭治郎が叫んだ。
「俺は、俺と禰豆子は鬼舞辻無惨を倒します！
俺と禰豆子が必ず、悲しみの連鎖を断ち切る刃を振るう！」
炭治郎が、そう叫んだ。
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作者名：やぁと | 作成日時：2021年10月19日 21時
