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46話 ページ46

宇髄天元side


早くも冬が明ける。

教室の窓から見える桜の木。

黙ってそれを見てると、濱と胡蝶が仲良く入ってきた。


「おぉ」

『おはよー』

「はよ」


濱は俺を見ると、笑いながら自分の席に荷物を置いて、早速やって来た。


『何見てたの』

「あそこの桜」

『あぁ……』


濱も窓から桜を見た。

すると風が吹いて木々が揺れる。


『はぁ、まだ風が吹くと少し寒いなぁ』

「そうだな」

『けど、暖かくなってきてるね』


Aの言葉に、俺は笑った。


「もう少しで、春が来るよ」

『……うん』


小四の時の春。

濱はこの季節が嫌いだと言っていた。


「楽しい時間ってのは、そんなもんだからな」

『あーあ、寂しくなるなぁ』

「別にクラス離れるかもしれねぇのは後一ヶ月も先だよ」

『そうだけどそうじゃなくて』


濱はそう言って笑った。

昔は春が来る度に嫌だと喚いてた。

けど、今はそうじゃなくて。


『昔は春が嫌いだけど、今なら好きだって言える』

「ん?」

『実弥も、胡蝶さんも、伊黒くんも、宇髄も、皆、多分離れても仲良くなれるから』


俺は濱を見る。

濱は泣いてはいないけど、寂しそうな顔をしていて。


『小学五年の時に、宇髄と離れた時、心臓が止まるかと思った。
けど、今ならあの時よりも繋がりは沢山あるから、大丈夫だと思う』

「そうか」

『うん。
宇髄、ありがとうね』

「ははっ、何に対してだろぉなぁ」

『ふふっ、色んなことに対してだよ』


寂しそうな顔から一転、濱は嬉しそうに笑った。

そんな表情ができるようになったのか、って思うと、俺は嬉しく思う。


色んな苦労をしてきた分、これからは沢山幸せを味わって欲しい。

Aだって、頑張ってた。

けど神はそれを嘲笑うかのようにあれこれAに不幸を与え続けた。

そんな中、Aが漸く幸せそうに笑ってくれた。

それだけで俺は嬉しく思う。

親友の、家族の幸せを、願い続けようと思う。


だから結婚式には呼べよな、って自分の心の中で言い放った。


もうすぐで、春が来る。

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作者名:やぁと | 作成日時:2021年10月1日 23時

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