42話 ページ42
Aside
冬休みも明けたかと思えば、今度はバレンタインがある訳で。
生憎お菓子作りなんて大層なことはした事ないので、ホットケーキミックスでココアクッキーを作ることにした。
それと家族用に市販のお菓子パック。
私たちは付き合ってることを周りに言いふらしてないので、一度家に帰る必要がある。
荷物を下ろして、制服から私服にチャチャッと着替えると、荷物を持って家を出た。
ダッシュで不死川家に向かう。
『実弥、これ。
良かったら兄弟で食べて』
「あ？」
この約一年で結構人相悪くなった彼。
普通にかっこいいんだよなぁ。
「んだコレ？」
『チョコ菓子と普通のせんべい。
一応、子供でも食べられるやつ。中には赤ちゃん用もあるから』
「……おう」
早口で伝えると、実弥は困惑しながらも頷いた。
だから頷くなって。可愛い。
『……それと』
「……」
『ごめん、あまりお菓子は作ったことないから、期待しないで』
そう言って、小さい袋を渡した。
『遅くなってごめん。
本当は、学校で渡したかったんだけど……けど』
私が前髪を撫でながら言うと、実弥は振り返ったり周りをチラチラ見た。
私が首を傾げると、実弥が私を抱きしめてくれた。
「ありがとな、A」
『っ』
「美味しくいただくわ」
『……うん』
私は微かに香る実弥の家の柔軟剤と、実弥の匂いを吸い込んだ。
とても優しい匂いがする。
実弥の背中に手を回して少しすると、私たちは離れた。
「わりぃな」
『気にしないで』
「また明日」
『うん、また明日、学校で』
私たちはキスをして、またね、と言い合った。
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作者名：やぁと | 作成日時：2021年10月1日 23時
