39話 ページ39
Aside
実弥に連れられて来た産婦人科。
初めて来た。いや、当然なんだけど。
「母さん、来たぜ」
『こんにちは』
「いらっしゃい」
中に入ると、実弥のお母さんが赤ちゃん、ことちゃんを抱っこしてた。
初めて手土産無しで入るからソワソワしてると、実弥のお母さんは笑いながら、
「Aちゃん、良かったら抱っこしてみて」
と言った。
名前を呼ばれた瞬間、手土産が無いことを怒られるかと思ったけどそんなことはなく。
代わりに抱っこしてみてと言われた。
『え!いや、あの、落としたら怖いし……』
「大丈夫よ」
『……』
真っ直ぐな眼差しに押されて、私はゆっくり手を差し出した。
「まだ首が座ってないから、肘の窪みに後頭部を当ててあげて、」
『はい』
「おしりの所から背中を支えて」
『……』
「頭を支えてる方の腕で、優しく腰の所をトントンてしてみて」
差し出した手に赤ちゃんを乗せられて、私は躊躇いながらも言われた通りにしてみる。
思いのほか、泣かなくてホッとした。
『な、泣くかと思った……』
「意外と大丈夫だろ?」
『う、ん……、まだ怖いけど』
実弥が隣からことちゃんを覗き込んで来て、ことちゃんの頬っぺに指を当てた。
凄くお兄ちゃんで、私は微笑む。
すると、
「二人とも、そうしてると十分に夫婦みたいね」
と、実弥のお母さんが笑いだした。
その言葉に実弥は顔を赤くした。
「まだ気が早ぇよ!」
『さ、実弥……』
「あらあら」
私は赤くなる所か、腕の中のことちゃんがいつ泣くか不安だったので、ちっとも笑えなかったが、最終的に実弥の腕に行くまで一度も泣かなかった。
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作者名:やぁと | 作成日時:2021年10月1日 23時