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俊哉がいなくなった部屋は、寒く感じるくらい空虚だった。

月曜日からはまた味気ない生活が始まり、平日と週末の落差に体が怠くなる。

だけどこの週の金曜日も、俊哉は普通に部屋に現れた。

「とんこつラーメン食べに来たよ。」

って、両手にたくさんのお土産を持って。

確かに先週の別れ際、「来週はとんこつラーメンの美味しい店に連れて行ってよ。」とか言ってたけど。

いつもの冗談だと思ってたから、本当に来るなんて思わなかった。









「何を持ってきたの?」

両手に下げてる紙袋を覗いたら、私が過去に好きだと俊哉に話したものがたくさん入ってた。

東京限定のチーズクッキーや、苺のお菓子、クロワッサンのラスク。

「こっちじゃ買えないでしょ?」

って、俊哉は言うけど…。

あちこち買いに走ってくれたのかなって思ったら、もう既に泣きそうなんだけど。

「明日は、美味しいとんこつラーメンの店に連れてってよ。」

目を潤ませている私に気付いた俊哉は、わざと話をそらしてくれる。

出来過ぎだよ…。









その夜は2人で近所の居酒屋さんでごはんを食べて、深夜遅くにベッドに入った。

そろそろ私も気付き始めてる。

付き合ってもいない男女が、こんな風に一つのベッドに入るって行為が、かなりおかしいってことは。

しかも腕枕してもらったり、ハグしてもらいながら寝てるなんて。

きっと、普通じゃない。

わかってるけど、自分でもどうにも出来ないんだ。

「俊哉は…、なんで毎週私に会いに来てくれるの?」

その答えはわかってるはずなのに、

「会いたいから。」

難なくそう答えてくれる俊哉の言葉が聞きたいだけの、我儘な自分が嫌だ。









「お金…、かかるじゃん。」

消え入りそうな私の言葉も、俊哉は笑い飛ばしてしまう。

「うん、けっこうかかるよね。
でも、LCCを使ってるから意外に安いよ。」

「嘘つき。
LCCでも往復2万円くらいにはなるじゃん。」

「お、よく知ってるじゃん。」

なんでからかうように言っては、私の頭を撫でる。

「もしかして心配してくれてんの?
Aは優しいね。」

優しさの塊みたいな俊哉にそんなことを言われると、なんだか恥ずかしくなる。

私は全然優しくないよ。

いつも自分のことばっかりで、今だって私のことを好きでいてくれる俊哉に甘えて、残酷なことをしてるのに。

「大丈夫。
俺がAに会いたいから勝手に来てるだけ。
もしかして迷惑だった?」

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わかめ(プロフ) - キスマイさん» お返事が大変遅くなりまして申し訳ございません。そして長々と読んでいただいてありがとうございました。また宮田くんのお話を書きたいと思ってますので、その節はどうぞよろしくお願いいたします。 (2019年2月3日 20時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
キスマイ(プロフ) - 宮田くんが大好きで色んなお話を読んできたんですが、こちらの俊くんとても素敵で優しさもカッコ良さも最高でした。素敵なお話をありがとうございます! (2019年1月14日 11時) (レス) id: 64045badf0 (このIDを非表示/違反報告)
わかめ(プロフ) - 雪名さん» お返事が遅くなりまして、大変申し訳ありませんでしたm(_ _)mm(_ _)mキュンキュンとか言っていただけて、うれしいです。どうかまた読んでやってください♪ (2018年10月25日 22時) (レス) id: ba720923d0 (このIDを非表示/違反報告)
わかめ(プロフ) - ランさん» お返事が遅くなりまして、大変申し訳ありませんでしたm(_ _)mm(_ _)m更新遅めではありますが、懲りずに読んでいただけると嬉しいです! (2018年10月25日 22時) (レス) id: ba720923d0 (このIDを非表示/違反報告)
雪名(プロフ) - 君僕のとしくんボイスを聞いてから最新回を読んだので、今夜もキュンキュンしすぎて心臓が止まりそうです!ハァ…(*´艸`*)ステキな夜をありがとうございます(*ノ∀ノ) (2018年10月4日 23時) (レス) id: 773c76c745 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:わかめ | 作成日時:2018年7月8日 3時

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