第３話 ページ22
中指を立ててAが呪霊の前に立つ、その少し前。
「
境内を歩き回る呪霊に聞こえないように、呟くようにそう言えば。ずるり、とどこからともなく小柄な老婆が現れた。
彼女は前回、呪霊だった時は服と到底言えぬみすぼらしい布を纏い、渇いた皮膚に落ちくぼんだ眼を持っていたが、今では透き通った目と健康な老婆らしい皮膚を持ち、紫の着物を身に纏って赤いマフラーをしている。
ヨジババと呼ばれたソレは、以前Aが蟲毒操術を使い使役した呪霊であった。今はヨジババの他に呪毒と呼ばれている。
正座をする呪毒にAは言う。
「あたしの短刀を探して。短刀が見つかったら、こちらからまた命令を出す」
はい、と口を利く代わりにそれは頷いて、再度ずるりとどこからともなく消えた。
Aの短刀を見つけたヨジババは、自分の足が勝手に動くのを感じていた。
砂利の上を滑るように進んだ先で、自分とはまた違う同士がいるのを確認する。同士の向こう側にいる主と目が一瞬だけあった。
自分の短刀を持っている腕が振りかぶる。
振り下ろす様に短刀を投げる。それと同時にまた足が動き、同士の横を通り過ぎた。向かうのは己の主の元。
一瞬の出来事だった。それはヨジババにとってもそうだった。自分では絶対に出来ない、主が自分の体を勝手に動かしたからできた動きだった。
短刀をAの元に投げてよこした呪毒は、そのまま主の元へと行き、横抱きにして戻って来た。
自分の倍以上あるAを横抱きにして運んだのだって、勝手に体が動いたからできたことだった。
「そこからは一瞬だった」
ガードレールに寄っかかりながらAは言う。いつの間にか教師である五条悟以外の２人も聞き入っている。
Aはただ、呪毒に「呪霊の相手してて」と言っただけだった。ヨジババに呪霊と戦って貰って、その隙を狙って呪霊を祓おうと思ったのだ。
しかし、ヨジババは単体で祓ってしまった。
くるりとこちらを見たヨジババの顔には呪霊の返り血が付いている。それをAは制服の裾で拭いて、ありがとうと言った。「戻って良いよ」
呪毒がでろり、とどこかに消えたのを確認してAは背筋を伸ばした。
「
そう言えば、Aを中心としてシャボン玉が広がるかのように清められた空気が広がった。
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しゆ - 続編が出ました。更新速度は遅いですが、よろしくお願いいたします。 (2021年3月18日 16時) (
レス) id: 0614066502 (このIDを非表示/違反報告)
しゆ - 山田憂さん» コメント、そして温かいお言葉……ありがとうございます！ これから寒くなる季節、山田憂さんも体調には気を付けてください！ (2020年11月3日 16時) (レス) id: 0614066502 (このIDを非表示/違反報告)
山田憂 - 夢主とキャラクターの細やかな心情が刺さりました…。体調に気をつけてお過ごし下さい。応援してます！ (2020年11月2日 13時) (レス) id: 2e6603876c (このIDを非表示/違反報告)
しゆ - チベットスナギツネさん» 神作！？ ありがとうございます！ 嬉しいです！！ コメントもありがとうございました！ (2020年10月30日 21時) (レス) id: 311275af3f (このIDを非表示/違反報告)
チベットスナギツネ - 神作・・・言いたいことは、それだけです。( ´∀｀)bｸﾞｯ! (2020年10月29日 23時) (レス) id: 4fb9137dc8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しゆ | 作成日時：2020年10月28日 22時
