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第1話 ページ3

呪術学校があるという事は、呪術師がいるという事である。

 呪術師がいるという事は、祓うべき相手がいるという事である。

 呪術師が祓う――――倒すべき相手、というのは一般的に「呪霊」と呼ばれている。一般的にと言っても、呪術師とそれに関係する人々にだが。



 呪霊は人間から漏出した呪力――――負の感情が澱の様に積み重なったことで形を成したモノである。

 怪談や妖怪など、共通認識のある畏怖のイメージから生まれた呪霊は仮想怨霊、死後呪いに転じた人間の魂は怨霊と呼ばれている。



 Aは、ここは京都か? 初めて訪れた人間はそう思うであろう、校舎である和風の建物の間を進み、上り、1本の襖の前で立つ。

 そして深呼吸をしてから、襖に手をかけ、スッと引いた。

「おう、A」

 はよー。と手を上げてAに話しかける、パンダ(、、、)が1匹、否1人。話しかけられた本人も、笑顔でそれに答える。

「おはよぉパンダ君」

 しかし、教室にパンダがいることに慣れてしまっているAはそのまま自分の席に着く。

「おはよ、真希」

 鞄を机に置きながら、後ろの席のポニーテールの女学生に話しかける。

 眼鏡をかけている彼女――――禪院真希(ぜんいんまき)はそれに「ああ」と返しただけだった。

 真希は再度、自分が読んでいた小説に目を落とし始める。



 すると、真希の目と小説の間にシュッと手が割り込んできた。Aの手だ。真希が「なんだ」と言いたげな目で彼女を見れば、Aはもう一度言う。「お、は、よ、う」

 はぁ、と真希は溜息をついた。

「はいはい、おはよう」

 なげやりぃ、と彼女の後ろに回って背中にのしかかるAを、「ほら言って来な」と手で押しやった。



 押しやった先は、1人の男子生徒の所。

 男子生徒の後ろの席のパンダが、ニヤニヤと笑っている。よく見れば真希も小説に顔が隠れているが、笑っているのではないだろうか。

 う゛、とAは声を詰まらせる。

 目の前にいるのは、口元を隠している男子生徒。彼の名を狗巻棘(いぬまきとげ)という。

 彼は、Aがそこに立っているのに気が付いたのか、教科書などを閉まっていた手を止め、見上げてくる。

 Aはその目線から逃げるように、目をそらしてから先程の2人(1人と1匹?)とは打って変わって、小声で言った。

「おは、よう……」

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しゆ - 続編が出ました。更新速度は遅いですが、よろしくお願いいたします。 (2021年3月18日 16時) (レス) id: 0614066502 (このIDを非表示/違反報告)
しゆ - 山田憂さん» コメント、そして温かいお言葉……ありがとうございます! これから寒くなる季節、山田憂さんも体調には気を付けてください! (2020年11月3日 16時) (レス) id: 0614066502 (このIDを非表示/違反報告)
山田憂 - 夢主とキャラクターの細やかな心情が刺さりました…。体調に気をつけてお過ごし下さい。応援してます! (2020年11月2日 13時) (レス) id: 2e6603876c (このIDを非表示/違反報告)
しゆ - チベットスナギツネさん» 神作!? ありがとうございます! 嬉しいです!! コメントもありがとうございました! (2020年10月30日 21時) (レス) id: 311275af3f (このIDを非表示/違反報告)
チベットスナギツネ - 神作・・・言いたいことは、それだけです。( ´∀`)bグッ! (2020年10月29日 23時) (レス) id: 4fb9137dc8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:しゆ | 作成日時:2020年10月28日 22時

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