第3話 ページ29
「
釘崎はパチン、と1つ指を鳴らす。それと同時に、マネキンに扮していた呪霊に刺さっている五寸釘がググ、と更に深く突き刺さり始めた。1人でに。勝手に。
何故1人でに五寸釘が動くのかは、釘崎自身が述べた。
「私の呪力が流れ込むから」
私の――――釘崎野薔薇の呪力が五寸釘に流れ込んでいる。だから動かそうと思えば釘崎は動かすことが出来る。触れていなくとも。
ガッ、という音と共に呪霊の頭が砕けた。
呪霊は傷を負っても回復することが出来るが、頭部の回復は難しかったのかもしれない。9出て行き、1戻す。回復するスピードが遅かったのかもしれない。
その呪霊は崩れたまま二度と動くことはなかった。
何かが動いた気配がして、釘崎は身構える。しかし、それは杞憂に終わった。
先程釘崎が祓った呪霊がいた更に奥まった場所に子供が1人。震えている所を確認して、釘崎は思う。子供……。遊びで忍び込んで呪霊にっ……てところか。
「ほら、もう大丈夫」
おいで、と言うと隠れていた子供はフルフルと頭を振った――――否定の意である。
それに少なからず釘崎はショックを受ける。
「子供は美人に懐かないってのは本当みたいね」
罪な女、と自分に言い聞かせながら虎杖を呼ぶかと考えた。
「まって」
おいていかないで、と子供が釘埼の方に手を伸ばす事と呪霊がもう1体子供の後ろに現れたのはほとんど同時だった。
今度こそ釘崎は身構え、呪霊に攻撃を仕掛けようとする。
――――しかし、仕掛けなかった。否、しなかったのではなく出来なかったのである。
呪霊の指が子供の首ギリギリにある――――呪霊が子供を人質に取っているから。
レベルと言っても、と五条は言う。「単純な呪力の総量の話じゃない」
それを2人はただただ黙って聞いている。
「“狡猾さ”。知恵をつけた獣は時に残酷な選択を突き付けてくる」
それ曰く、命の重さをかけた天秤を。
呪術師釘崎野薔薇が出来ることは、心の中で悪態をつくことだけだった。
こんな呪い全然大したことないのに。4級! せいぜい3級の呪いでしょ!?
そしてまた、彼女も気が付く。この呪いは己が弱い事を自覚しているのだと。自覚している、それゆえの人質だと。
落ち着け私!! 私が死んだらその後、子供も死ぬ。子供が死んでも私は死なない!! 合理的に考えて、私だけでも助かった方が良いでしょ?
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しゆ - 続編が出ました。更新速度は遅いですが、よろしくお願いいたします。 (2021年3月18日 16時) (レス) id: 0614066502 (このIDを非表示/違反報告)
しゆ - 山田憂さん» コメント、そして温かいお言葉……ありがとうございます! これから寒くなる季節、山田憂さんも体調には気を付けてください! (2020年11月3日 16時) (レス) id: 0614066502 (このIDを非表示/違反報告)
山田憂 - 夢主とキャラクターの細やかな心情が刺さりました…。体調に気をつけてお過ごし下さい。応援してます! (2020年11月2日 13時) (レス) id: 2e6603876c (このIDを非表示/違反報告)
しゆ - チベットスナギツネさん» 神作!? ありがとうございます! 嬉しいです!! コメントもありがとうございました! (2020年10月30日 21時) (レス) id: 311275af3f (このIDを非表示/違反報告)
チベットスナギツネ - 神作・・・言いたいことは、それだけです。( ´∀`)bグッ! (2020年10月29日 23時) (レス) id: 4fb9137dc8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しゆ | 作成日時:2020年10月28日 22時