閑話休題 苦労人 ページ44
伊地知side
＊
的場さんからの視線をスルーして”付喪神”が私のスーツの裾を引っ張る。
「何ですか？」
「ア”、ア”！」
「ああ…”人張”ですね。ありがとうございます」
差し出されたのは一枚の御札。受け取って、津美紀さんの顔のそばにそっと置いた。
背後から「呪霊操術か何かか…？」という呟きが聞こえてきた。
「正確には違いますが…そんなものだと思っていてください。帳を降ろしますね」
「あ…よろしくお願いします」
的場さんに向けて1つ頷き、津美紀さんから離れて病室を出る。扉を開けたまま病室に向けて唱え慣れた文言を唱え、病室全体に帳を降ろした。
帳の内側にいる的場さんと”付喪神”たちに一礼をして、その場から離れる。
ほぅっ…と安堵のため息がもれた。任務完了。Aさんの無茶ぶりは今に始まったことではないけれど、唐突に来られると心臓に悪い…。
あとは的場さんから連絡が入るまで待機…ああ、そういえばさっき、病室の窓ガラスが割れてしまったんだった。看護師に報告して、謝っておかなければ。
次にやることを頭の中で組み立てながら長い廊下を歩く。やっとエレベーターまでたどり着き、ボタンを押そうとした、そのとき。
〜♪〜〜♪と、内ポケットの携帯電話が着信を告げた。なぜか悪い予感がする。
携帯電話を取り出した。表示されている名前を見て悪い予感が確信に変わった。
「もしもし伊地知ぃ〜？出るの遅いって」
「すみません、五条さん。お疲れ様です。何かありましたか？」
「あのさ、今僕どこにいると思う？？」
「？？…イギリスじゃないんですか？」
「ブッブー。正解はぁ〜…成田空港でっす！！てわけで伊地知、車出して」
「え！？」
「３０分以内、爆速でね。しくよろ！」
プツッと切れる通話。私は呆然と携帯電話の液晶画面を眺めるしかない。
あの人の帰国は来週のはず。それなのに今、成田空港？？？
理解が追い付かない。そういえば、イギリスでの任務は五条さんが観光する時間も含めて予定を立てていた。多少五条さんが我が儘を言っても何とかなるように、私が現地の補助監督と話し合って決めたスケジュール。もし五条さんがその時間をかっ飛ばして巻きで終わらせてきたとしたら…。
つまりは、そういうことだろう。深い深いため息を吐く。
銀野さんが恋しい…。彼女がいれば五条さんを叱ってくれたのに…。
私はエレベーターのボタンを押すと、静かに天井を仰ぎ見た。
＊
- 金 運: ★☆☆☆☆
- 恋愛運: ★★★☆☆
- 健康運: ★★★★★
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今日の名言or名場面
五条「強くなってよ。僕に置いていかれないくらい」
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