7:行き止まり ページ8
ここは本当に日本なのか。
私は目の前に立つ巨大な塔を見上げながら、そんなことを考えていた。
今日は傑と街に出ている。彼が言うにはこれがデートというらしいが、私にはよく分からない単語だ。何せ10年間ほど牢屋に閉じ込められていたので、外の世界がどうなっているかなど知りもしなかったから。
「久々の外の世界はどう?」
『……なんか、すごいね』
「はははっ、無理もないか。そもそもAが住んでいたところって、ここからずっと離れたところだもんね」
そう。それもあって私は東京にいるというのが、数十年先の未来を見ているような感覚に襲われている。そしてあの屋敷に来てからろくに外にも出ていなかったため、余計にだ。
一方、傑は楽しそうに写真を撮っている。私がその様子をじっと見ていると、こちらに気づいたのか、彼は手を振ってきて私にカメラを向けた。気持ちがいい機械音が小さく鳴る。
いつの間にかお昼時になり、2人でレストランに入った。ひとりから家族連れまで大勢の客がいる。私たちは端の方にある2人席に案内された。暑さで火照った体が冷房で冷やされていく。
『そういえば、なんで今日は外へ?』
「うーん……Aを喜ばせたかったからかな」
自分で聞いたくせに、顔がどんどん赤く染っていくのがわかる。この感情はなんだろうか。嬉しいような、少し照れくさいような、今まで感じたことのないもの。
あの夜からずっと、この名前も知らぬ感情が自分の胸の中に渦巻いている。
私はそれに気付かないふりをして、傑の瞳から目を逸らした。
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異端(プロフ) - 凄くどストライクな作品です!!更新楽しみにしてます! (2021年4月11日 2時) (レス) id: 22d2735c29 (このIDを非表示/違反報告)
いちご(プロフ) - 金魚きんぎょさん» 読んでくださりありがとうございます!完結まで頑張ります! (2021年1月4日 22時) (レス) id: 88753b0337 (このIDを非表示/違反報告)
いちご(プロフ) - 勿忘草さん» 嬉しいお言葉をありがとうございます! (2021年1月4日 22時) (レス) id: 88753b0337 (このIDを非表示/違反報告)
いちご(プロフ) - 天 元なっつ。さん» そう言ってもらえると自信つきます!ありがとうございます(*^^*) (2021年1月4日 22時) (レス) id: 88753b0337 (このIDを非表示/違反報告)
金魚きんぎょ(プロフ) - この作品好きです!更新楽しみにしてます!! (2021年1月1日 23時) (レス) id: c103e928da (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いちご | 作成日時:2020年12月31日 16時