3:当たり前 ページ4
『げ、夏油様…?』
ドクン、ドクンと心臓の音がやけに大きく聞こえる。
まるで何かのカウントダウンのようだ。
急変した彼の様子に怯えて、そちらを見ることが出来ない。
身体が急激に冷えていく感覚。以前に体験したことがある。
確かあの時は、呪力をコントロールできずに村の美しい女性に怪我をさせてしまった。顔に傷をつけたのだ。その女性から悪魔やら醜女やらと罵声を浴び、段々それが村中に広まった。月日が流れても、その仕打ちが止むことはなく、村の人々は私を見る度に悲鳴をあげながら逃げていった。
それからしばらく経ち、私は化物としてあの牢屋に閉じ込められることになったのだ。
____ああ、そうか。私は今悪いことをしたのか。
「A、こっちを見ろ」
夏油様の低く威圧のある声が響く。
この機会を逃したらまた何かされるかもしれない。
私は先ほどまでとは打って変わって、ゆっくりと視線を上げていった。
夏油様の黒い瞳が、私の姿をしっかり捕らえている。まるで獲物を見つけた獣のようだ。
「やっとこっちを見てくれたね」
『…はい、申し訳ございま』
「敬語は使わなくていいと言ったろう?」
今度は腹を殴られた。
私が悪いことをしたから。私が夏油様の好意を無下にしたから。
「あと夏油様って言うのもやめてね。Aだけには名前呼びしてほしいな」
『私だけ…?』
「そう。わかったら返事して」
「……うん、わかった」
私が敬語を外して返事をすると、夏油様は私の頭をよしよしと撫でてくれた。
そうか。悪いことをしたら罰が下り、良いことをしたら褒美をもらえる。それが当たり前。
それなら私は後者を選ぶ。
貴方に、唯一私を人間だと認めてくれた、救ってくれた貴方に見捨てられたくない。
この考えに陥ったところで、私はもう手遅れだった。
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異端(プロフ) - 凄くどストライクな作品です!!更新楽しみにしてます! (2021年4月11日 2時) (レス) id: 22d2735c29 (このIDを非表示/違反報告)
いちご(プロフ) - 金魚きんぎょさん» 読んでくださりありがとうございます!完結まで頑張ります! (2021年1月4日 22時) (レス) id: 88753b0337 (このIDを非表示/違反報告)
いちご(プロフ) - 勿忘草さん» 嬉しいお言葉をありがとうございます! (2021年1月4日 22時) (レス) id: 88753b0337 (このIDを非表示/違反報告)
いちご(プロフ) - 天 元なっつ。さん» そう言ってもらえると自信つきます!ありがとうございます(*^^*) (2021年1月4日 22時) (レス) id: 88753b0337 (このIDを非表示/違反報告)
金魚きんぎょ(プロフ) - この作品好きです!更新楽しみにしてます!! (2021年1月1日 23時) (レス) id: c103e928da (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いちご | 作成日時:2020年12月31日 16時