１０：迷子 ページ11
その夜、私は夢を見た。
夢というか、随分前の記憶というべか。
一年前の夏に傑が救ってくれた時の光景が、頭の中で浮かび上がる。
薄暗く湿った部屋の中にある、獣を閉じ込めておくような箱型の牢屋。外から響く人間たちの悲鳴。私は何が起こっているのか確かめようと、小さな窓を覗いている。
そこから一気に場面が変わった。
牢屋の鍵が開けられて、久しぶりに牢屋の外側の空気を吸う。たいしてうまくもない。
傑に一緒に行こうと言われ、どこへと問うた私に、彼は＿＿＿＿
あれ？傑と私は、どこへ行くんだっけ……。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
＿＿＿＿＿＿＿＿
＿＿＿＿
『思い出せない……』
起きて早々、私は動揺していた。
随分前といってもたかが一年前のこと。その出来事は私の人生において最も大きな転機。忘れるはずがないのに、傑が呟いた言葉を頭の中で再生できない。
気づけばシーツに丸い染みができていた。泣いている。何故泣いているのだろう。その言葉がそれほど大事なものだというのか。本能がそう叫んでいるのか。
「A、何故泣いているんだい？」
すぐそばで寝ていたはずの傑が、何やら興味深そうに私を見つめている。
『思い出せない、思い出せないの。何か大事なことが……きっと私を
「……何を言っているんだ」
君を救ったのは私だろう？
大丈夫、私の手を握っていなさい。
夏油様……傑の両手が、私の左手を優しく包み込む。
最後の涙の一滴が彼の手の甲に落ちた。
そうだ。私を救ってくれるのは目の前にいる彼だけ。
大事なものはこの手の中にある暖かさだけ。
＿＿＿＿それ以外は、必要ない。
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異端(プロフ) - 凄くどストライクな作品です！！更新楽しみにしてます！ (2021年4月11日 2時) (
レス) id: 22d2735c29 (このIDを非表示/違反報告)
いちご(プロフ) - 金魚きんぎょさん» 読んでくださりありがとうございます！完結まで頑張ります！ (2021年1月4日 22時) (レス) id: 88753b0337 (このIDを非表示/違反報告)
いちご(プロフ) - 勿忘草さん» 嬉しいお言葉をありがとうございます！ (2021年1月4日 22時) (レス) id: 88753b0337 (このIDを非表示/違反報告)
いちご(プロフ) - 天 元なっつ。さん» そう言ってもらえると自信つきます！ありがとうございます(*^^*) (2021年1月4日 22時) (レス) id: 88753b0337 (このIDを非表示/違反報告)
金魚きんぎょ(プロフ) - この作品好きです！更新楽しみにしてます！！ (2021年1月1日 23時) (レス) id: c103e928da (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：いちご | 作成日時：2020年12月31日 16時
