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何も知らない7 ページ9

温かい。

何かの温もりに触れ、目を開いた。

焦点の合わない目にはよく見えない。

「何?」

「ん?あ、Aおはよう。」

その声に、一気に覚醒した。

もう一度、よく見ればそこには大好きなおにいちゃんの姿。

「ゆ、め?」

ぺた、とおにいちゃんの頬に手を当てる。

「ひどいなぁ、夢なんかじゃないよ。」

その声はあまりに優しくて、幸せすぎて、しばらくの間おにいちゃんの腕の中から抜けることはできなかった。

「怪我は、大丈夫かい?一応、職場の専属医に治してもらったのだけれど・・・」

その言葉に、昨日のことを思い出す。

肩を見ると傷はきれいになくなっていた。

「うん、大丈夫。その、専属医っていう人すごいんだね。傷跡もないよ。」

その言葉に満足そうに頷いた。




「変わらないね、今朝はホットケーキかぁ。」

二人で囲む食卓は、いつも以上においしく感じた。

「Aは、これから学校?」

コクン、と頷くとニコニコと微笑んだ。

「そっか。私も今、仕事をしているのだよ。」

「何のお仕事?」

そう聞いた私に、声を潜め小さく囁いた。

「んー。人を救うお仕事だよ。」

朝食を食べ終えた。

制服に着替え、靴を履く。

そこには私の靴に並んでもう一足、おにいちゃんの靴が並んでいた。

「ちゃんと、帰ってきてね。」

「うん、もちろん」

見せてくれた笑顔に安心して、扉に声をかける。

「いってきます。」

「いってらっしゃい。」

返ってきた返事に足取りは、いつもより軽かった。









「・・・嘘つきで、ごめんね。」

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作者名:詩織 | 作成日時:2016年11月6日 11時

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