何も知らない4 ページ6
いつもより、少しだけ早く目が覚めた。
しばらく部屋でゴロゴロしていようと思ったが、昨夜のことを思い出し、急いで部屋へと移動した。
扉を開いた瞬間、家中に響く音によって身体が固まった。
吹き飛ばされた机。
その上の朝食は、見るも無残な姿になって床の上でつぶれた。
でも、何より
「っ――」
私の首を絞める黒い物体。
それは急に大きくなったかと思うと、増々力が強くなった。
頭が白くなっていくのがわかる。
「おい、お前は誰だ。ここはどこだ。」
「これは何だ?何を企んでいる?」
地を這うような声。
黒い物体の先には、昨夜家の前で倒れていた青年。
その目は黒い物体を見つめ驚いたように見開かれていた。
まずは、この状況を何とかしなくては。
「わ、たし、は、だ、宰、、Aで、す。こ、こは、わた、し、の、家。」
頭に血が回らなくて、途切れ、途切れの言葉を紡ぐ。
名前を言った瞬間、表情が硬くなったような気がした。
「さく、や、家のま、え、で、たおれ、てい、たか、ら。」
「あ、と、、は、わか、、ない」
その言葉に拘束が緩み、首を絞めていた黒い物体が消えてなくなった。
表情が見たいが、咳き込んでしまい顔をあげることが出来ない。
「そうか、それでは、この包帯は貴様が巻いてくれたのか。」
頷くと、一瞬息を呑んだような音がした。
静寂が訪れる。
「悪かった。」
その声はさっきより冷たくなくて、本当にそう思っていることが伝わってきた。
「気にしないでください。いきなり知らない所に連れてこられて、恐がられるのは誰でもそうですから。」
貴方の名前が聞きたいです、と言えば
「助けてもらった礼に名乗ってやる。」
――僕(やつがれ)は、ポートマフィアの狗。
――芥川 龍之介だ。
その言葉と共に、外套を翻し出ていった。
「・・・ポート、マフィア?」
聞いたことのない単語に、思わず首を傾げた。
まぁ、それよりも、やるべきことが出来てしまった。
散らかった部屋を見回し、大きく背伸びをする。
「さて、掃除しないとな。」
恐かったけど、少しだけ、ほんの少しだけ賑やかな一日が始まった。
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作者名:詩織 | 作成日時:2016年11月6日 11時