何も知らない12 ページ14
目が覚めた。
目に入ったのは知らない天井。
辺りを見回せば、ベッド以外何もない白い部屋だった。
部屋から出ようと立ち上がろうとしたが、身体中を鈍い痛みが走り表情が歪んだ。
でも、同時にもう一つの発見があった。
嫌な意味で。
映ったのは、足枷によって自由を奪われた足。
引っ張っても、床にたたきつけても外れない。
焦っていた。
だから気づかない。
「やっと、起きたか。もう三日目だ。」
三日も経ったのか、と考える頭とは対称的に
聞こえてきた声に肩が震えていた。
入口に目を向けると立っていたのは、
「・・・なか、はらさん」
近付いてくる彼に恐怖を覚えた。
逃げようとしても、後ろは壁。
伸ばされた手に目を瞑った。
「っ―悪かった。」
予想していた痛みの代わりに、謝罪の言葉が彼から紡がれた。
「お前が、異能増大の能力者だったとは知らなかったんだ。」
「・・・異能?」
聞きなれない単語に首を傾げる。
すると、強く肩を掴まれた。
「ま、まさかとは思うが、異能力について何も知らないのか?」
コクコクと頷くとその手をゆっくり離され、代わりに中原さんはベッドの上に腰を掛けた。
「・・・いいか、異能力っつーのは、常識では起こりえない現象を起こす特殊な力のことだ。俺みたいに重力を操作する力だったり、お前の兄みたいに能力を無効化したりする力があったりいろいろだ。」
「んで、お前の異能力は異能力の増大だよ。大方、触れた異能力者の能力を増大させる力だろ。俺がお前に触れた瞬間に暴走したみてぇに強くなりやがったからな。」
わかったか、と顔を覗き込む中原さんに頭を縦に振った。
「首領がお呼びだ。後でまた迎えに来るから、服着替えておけ。」
そう言って渡されたのは、真っ白なワンピース。
「・・・・・」
直視した。
これを、私が着るのか?
似合わないだろう?これはさすがに。
そんな私に苦笑いを浮かべ、中原さんは部屋を出ていった。
取り残された私は、呆然と、手のひらを見つめた。
――能力、か。
この力があれば、
「私にも、おにいちゃんの手助けができるのでしょうか。」
その問いに答えてくれる存在は、ここにはいなかった。
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作者名:詩織 | 作成日時:2016年11月6日 11時