帝の門と吸血鬼 第三章

百三十三帝 ページ38

主「…お前は何を言ってる？」

邪【君の欲望を代弁してあげただけじゃないか。
あの従者に再会して精神の檻が壊れてる。
そのおかげで、君の心と欲望がよく見える】

主「私は楓をそんな対象として見たことがない。
お前の言う欲望は合ってない」

邪【"君はあいつと寝たいんだね"なんて言った？
君は失ったものが失われていなかったことに
歓喜し、固めた精神を緩めてしまっただろ？】

鬼を制御するには強い意志と濃い欲望がいる
今まで、邪射と契約してからそれを意識した
鬼は心の隙に入り込み乗っ取ろうとしてくる
邪射はそんなことはしないだろうと思い込み
油断したが、本質はそのままだったらしい

主「それがどうした」

邪【…他の鬼が、大人しくしていられるかな？】

ずくん…と、心臓が締め付けられるような
感覚がする。同時に激しい頭痛までする
鬼が出せと暴れ、精神に負荷をかけてくる
意識を封じ込めれば使える力に限度がある
つまりは扱いやすく都合が良かった
もしそれが、恨まれることになってもだ

主「…くそ、さっきから…生意気に暴れて…」

邪【久しぶり味わう苦痛は辛いだろ？肉体の
痛みを忘れた君には、一種の拷問だね】

主「お前、鬼の分際で調子に乗るな」

感情を制御する。何も思わず、何も考えずに
鬼を押し込む。無駄な欲を出せば鬼に呑まれ
てしまう。たかが生きていただけで喜ぶのは
軽率だったろう。グレン達にも笑われる

邪【ほんとはさ？一瀬グレンに聞きたいだろ？
あいつが持ってる、真昼ノ夜についてとか】

主「…はっ、長い間契約してるのに今更なんだ？
ようやく鬼の頭角を現したか」

大人しくしていた思ったら生意気になって
苛々する。人の心の隙を広げようと欲望を
掻き立て、精神を抉ってくる
感情が入ると鬼の制御が難しくで面倒臭い
鬼を五匹と、目の前の意地悪な鬼を抑える
自分の本当の欲望を確認する暇もないな

邪【君の欲望、もっと奥まで見せて？】

主「……君々って、うるさいなぁ」

げほっと鬼を吐き出す。この気持ち悪さは
これまで経験したことがないほど嫌だった
どろっとした黒い液体は次第に形を整える
先程まであった頭痛と胸の痛みはなくなった

百三十四帝→←百三十二帝

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す