帝の門と吸血鬼 第二章

九十五帝 ページ47

優は悔しそうに顔を歪めた後
戸惑いを隠せずにこう言った

優 「なんで…なんでだよ…
なんでここまでして、力が足りない！」

ク「そりゃあもちろん、君が家畜
だからだよ」

流石に今の言葉は禁句だ
吸血鬼を殺すために軍に入って
その決意や覚悟を"家畜"で済ます
クローリー、いくら君だとしても
私の可愛い部下を馬鹿にするのは

優「！………黙れ」

ク「どれだけ足掻こうと、人間は家畜
以上にはなれない」

何だろう、興が冷めていく
彼に対する興ではないけど
この、争いに対する興味が
一気に失われていくのが分かる
だって、無意味な争いは嫌いだ
意味があるからこそ私は殺すし
刃向かう火の粉を払うためにも
自分の呪われた武器を使うけど
これ、意味があるように思えない

主「鬼に成っちゃったらどうする？」

優「なんだよ…！」

恐ろしい顔をして自分の手を見る
優に近付き、頬に手を添えて言う

主「君さ、もっと貪欲になったら？
さもないと………、仲間が死ぬ
グレンだってシノアだって死ぬ
力がない君が守れなかったから」

優「………もっと、もっと」

主「いい子だねぇ、君って子は
貪欲に力を求めればいいんだよ」

この子が鬼に成ることは自由だ
力を求めすぎるあまり、堕ちる
私と同じ、制御できない鬼の力
それを持ってしまえば終わるよ
心も体も全て、乗っ取られる…

グ「A！優を鬼にするつもりか！」

主「…この世界じゃ、それくらいしないと」

ビキッッ

優の頭から一本の角が生える
紛れもない鬼の角、堕ちたのか
人間でなくなって鬼に堕ちた…

優【さぁ…もう一ラウンドだ、吸血鬼‼ 】

目の前で可愛い部下が鬼に成る
ゾクッとする興奮と苦しい不安
それが混ざり合って気持ち悪い
でも、私は人間でも鬼でもない
ましてや吸血鬼でも天使でもない
誰からも拒絶される【悪魔】だよ

九十六帝→←九十四帝

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す