帝の門と吸血鬼 第二章

七十一帝 ページ21

広がる真っ白な世界が視界に入る
何故、邪射まで邪魔をするの？
私は力が欲しいだけだと言うのに

主「邪射…、何のつもりなの」

弾の入っていないであろう銃を
カチャカチャと鳴らしている邪射
こちらを向こうとはしない
強制的に呼び出しておいて何なんだ
悠長に過ごしている暇などない

主「邪射、力を寄越せ」

邪【そんなに、力が欲しい？】

振り向いた邪射の瞳は揺れていた
悲しいのか、怒りによるものなのか
そんなことはどうでもよかった
力が欲しいと鬼に頼んでいるだけだ
欲望を喰らわせてやる代わりに言った
好きなだけ力をあげると言ったのに
何故寄越さない？何故逆らうの？

主「契約の際、君の条件を飲んだ
約束通り面白いものを見せて来た
血も吸わせた、欲望も出し惜しみなく
与えているのにら何故逆らうのかな？」

邪【確かに、Aに対して不満はない
Aは好きだ、でもお前は誰だ？】

主「君はよく知っていると思うけど」

西條家の現当主、西條A
とにかく欲深い邪悪な人間だよ
そんな私が産まれる前から共にいた
邪射は、赤子の時から共にいる
私のことは全て知っているはずなのに
訳の分からないことを言って来る

邪【君が勝手に産み出した父親の怨霊が
君を呑み込もうとしている】

主「怨霊？私がお父様の怨霊を作るわけが
ないでしょ？お父様は今頃神になって
私を見守ってくれているはずだもん】

今まで死なずに生きて来れたのは
お父様が守ってくれていたから
呆気なく死んでしまったからと言って
最愛のお父様を裏切りたくない

邪【そう言う訳の分からないことだって
西條日龍が言わせているんだよ？

僕は見せた、奴が君に何をしたのか
やっと真実を受け入れたと思ったら
今度は何？また、悪夢に飛び込む気？】

主「お父様は怨霊なんかじゃないよ。
それ以上言うと、君を喰い殺すから」

邪射は苦しそうに、悲しそうに目を
細めて表情を歪ませた
私の邪魔をするなら邪射でも殺す
本家に戻れば、研究は急激に動くんだ
この不完全な体ともさよならできる

ク「鬼なるのはやめろ。色々と困るんだ」

主「……！」

何処から聞こえる？この声は
私は君に別れを告げて逃げたんだよ？

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