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お祭りが開催されてる近くまで来ると神ちゃんが繋いだ手を離そうとするから思わずぎゅっと力を込める。
眉を下げて不安げに見つめられるけど、大丈夫って言って笑ってみせる。
出店の並ぶ道はたくさんの人で溢れ返っててその人波に入り込めば、みんな屋台や自分たちのことに気を取られて俺らの手元なんか見ちゃいない。
ゆっくりと一歩ずつ進む度にカランコロンと鳴る下駄の音。
あちこちからひっきりなしに聞こえてくる威勢のいい声と眩しいほどのライトの数を取り付けた様々な屋台。


「 しげ!見て、なにあれ!!おれあんなん見たことない!」
「 俺も初めて見た!! 」


お祭りらしいBGMや行き交う人たちの会話で賑やかな空間では普段の声のトーンじゃお互いの声は聞こえづらくて神ちゃんに繋いだ手とは反対の手で袖をクイっと引っ張られて耳を寄せる。
珍しい屋台にテンションが上がって無邪気な笑顔を近くで見せてくるかわいい子。
どこでそんなあざとい技、覚えてきたん?
もう俺の心臓さっきからキュンキュンうるさいねん。
ヨーヨー釣りや金魚すくいと目に飛び込んでくる情報全てが胸を高鳴らせてわくわくがとまらへんのは俺だけじゃなくて、普段オカンなんて呼ばれてる神ちゃんも今日ばっかりは5歳児そのもの。
視覚的情報に加えてどこからともなく香ってくる美味しそうな匂いに嗅覚までも刺激されて感情が忙しい。
あれ食べたいだのこれやるだの、話しながら歩いてたら後ろから子供のはしゃぐ声が聞こえてくる。


「 神ちゃん、こっち 」


繋いでた手を軽く引っ張って自分の方に引き寄せたら大人しく俺の胸に飛び込むみたいに引っ付く神ちゃん。
普段より薄い布越しに伝わる神ちゃんの体温。
器用に隙間を縫って駆けていくちびっ子たち。
少し下に視線をずらせばこっちを見上げてにこぉって笑いながら礼を言う神ちゃん。


「 ん、もうちょっと近くにおり? 」
「 歩きづらくない? 」
「 はぐれたらあかんやんか。迷子防止やで 」


そう言って肩と肩が重なるみたいにぴったりとひっついて歩くようにしたら神ちゃんがクスクスと笑った。
何かと理由をつけて神ちゃんにくっついときたいことくらい、神ちゃんにはお見通しみたいや。
そんでも素直に近くにおって離れへん神ちゃんも大概やでな。


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作者名:いえやす | 作成日時:2022年5月24日 21時

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