能面執事２【紫】 (ページ29)

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79. 小悪魔オンナとずるいオトコページ29

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屋敷に帰ろうと車へ向かうと、

運転士の重岡がいなかった。

「あれ？重岡は？」

「今日は私が運転致します。

……ご不満ですか？」

わかりやすく拗ねた声で答える濱田。

「ふふ、うん。不満。」

「な、…！

でしたら、今から重岡をお呼び「崇裕と」

「…え？」

「……崇裕と手繋いでたいのに出来ないから。」

この前ドラマで見たセリフを言ってみた。

めっちゃ恥ずかしい…！

崇裕はポカンと口を開けたまま動かないし。

「ちょっと…、なんか言ってよ。」

「や、まっ、……それはあかんやろ…」

しどろもどろになりながら、

耳を赤くしてはあーっとため息をつく崇裕。

「また我慢出来ひんくなっちゃう？」

面白いくらい動揺してくれていい気になった私は

笑いながら聞くと、

崇裕は、顔を隠してた手を退けて、ちょっとだけ睨んでくる。

「A、ほんま小悪魔。」

「ふふ、でも我慢してね？私も我慢するから。」

「あとで覚えとけよ…」

そう言ってドアを開けくれたので、乗り込むと

シートベルトをつけてくれた体制のまま

体を前にして近付いてくる崇裕。

「ちょ、たか、ん…っ……」

「はは、顔真っ赤やん」

するっと頬を撫でて、へらぁっと笑って、

ドアを閉めて、運転席にまわる。

「ずるい…」

私の小さな声が響いた。

執事濱田と崇裕を使い分けるのがずるい。

何枚も上手なのがずるい。

…私が初めてな癖に、キスが上手いのがずるい。

(初めてなのは、お兄ちゃんからさっき聞いた)

車に乗り込んだ崇裕を睨むと、

ルームミラー越しに気付いたのか、ちょっと笑った。

「そんな赤い顔して。煽らんといてや。

あとでちゃんと構ったるから」

って、……やっぱりずるい！