能面執事２【紫】 (ページ24)

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74. 紫色の花と世界一綺麗ページ24

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「今日だけ、誤魔化したるから。

ほら、とりあえず涙拭いて。」

ティッシュを押し付けられて、あてる。

「A様、

今から俺がいいって言うまで目開けんといてな？」

「…うん。」

そう言われて素直に目を閉じれば、

施されていくメイク。

目を閉じるとかなり落ち着いた。

「……はい、もう開けてええよ」

「…っわぁ、すごい！」

鏡に映るのは、いつもよりも何倍も綺麗にメイクされた私。

髪もいつもおろして巻いてあるのではなく、

巻いてアップでまとめてあって、その髪のところどころには

小さな紫色の花が咲いているように付いている。

「…で、これを付けるっと……」

渡されたのは、ティアラ付きのベール。

差し込んで鏡を見ると

目が合った望は、泣きそうなくらい優しく

「世界一、お綺麗です。A様。」

と言って、ドレスを着るように言い部屋を出てった。

大丈夫。

今の私なら、このドレスを笑って着れる。

苦しくない、って言い聞かせてたけど、

望のおかげで気持ちはかなり落ち着いて、

ドレスの後ろの留め具にも、絶対届かないはずなのに

今日はなぜか手が届いた。

少しずつ、忘れていけばいい。

コンコン

ドアの２回ノックにも今更驚いたりしない。

入ってきたのは、式場のスタッフの方々。

「A様、……大変お綺麗です。

会場のご準備が整いました。参りましょう。」

だってあなたはもうそばにいないから。