73. ドレスと苦しみ ページ23
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控え室に入ると、
昨日見た、濱田に選んでもらった
真っ白なドレスが、私を待っていたみたいに部屋にあった。
今の私の気持ちにはそぐわない白。
見るだけで心臓が握りつぶされるように苦しくなって、
その場にしゃがみ込んだ。
「失礼しま……A、様？
大丈夫ですか？！」
「っ、……ぁ望…」
「あーっもう！
擦ったらあかん！待ってて」
濡らしたタオルを持って優しくまぶたを拭ってくれた。
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「ちょっとは落ちついた？」
「うん、ごめんね。ありがと」
少し微笑むと、望は持ってたバッグからメイク道具を取り出して準備を始めた。
それをぼーっと見つめる私と目が合うと、
少し息を吐いてこう言った。
「ほら、早うしてください。
今から、A様のこと世界一綺麗な花嫁にして、
後であの人がA様の写真見た時、
後悔させてやるんです。」
ねっ、て笑うから私もただ頷いてドレッサーの前にた。
「A様なら、絶対幸せになれますから。
やから、そんな顔しやんでください。」
「…そんな、顔？」
朝重岡に言った言葉がそのまま返ってきた。
「A様、今、悲しいです。
って叫びたいって顔してんで。」
そう言われて鏡を見ると、
「うそ…」
笑えてたって思ってたはずの顔は、今にも泣き出しそうなぐらい酷くて、
枯れたと思ってたら涙がまだ溢れそうだった。
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作者名：ちい
| 作成日時：2017年10月9日 0時
