平成跳女装事変

第一犠牲者 ページ1

とは言いつつ、本音を言ってしまうと誰か一人でもやってくれりゃ良いのだ。


9人中8人に全力で拒否られても、1人がやってくれるなら充分暇潰しになる。
暇を潰せる時間が40分か5分かになるだけの違いなのだ。

35分の差はまぁまぁ大きいけど、これに関しては微々たる問題である。


だとすると、だ。
必死に頼めばやってくれそうなメンバーを最初に選びたい。
最悪泣き落としでもしてやろう。
そこまでしてでもこの暇を潰してもらいたい。



「……てなわけで、圭人やってくんね？」

「いや、普通にNoなんだけど」



伊野尾は1つ重大なミスをした。
冒頭の「とは言いつつ〜潰してもらいたい。」をそのまま本人に伝えてしまったのだ。
そりゃ、断られるのも当たり前である。

もしここで「俺…、女装してもらわないと身体中の骨が一揆に砕けてしまう病気なんだ…！！」と言っていれば、きっと岡本は快く女装をしてくれただろう。


どうする。伊野尾は頭を悩ませた。
嫌だ嫌だ、女装してもらいたい。だって絶対面白い。TVだったら尺とれる。

「…圭人、聞いてくれ。」




伊野尾は背後から、セーラー服を取り出した。

「これは、ジャパーニズseihukuだ。」

「ジャパーニズseihuku……！？」

「あぁ、これを着れば、きっとアメリカでもネタにできる。友達ができる！
…だから俺は、お前にこれを着て欲しい！！」

「伊野ちゃん…まさか、俺のために…！？」



冒頭の台詞なんて忘れた。
そこに広がるのは、優しい世界だった。
その世界の5割が口から出たでまかせだったとしても、この世界には優しさ(仮)が広がっているのだった。

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