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何日かぶりの暖かい布団の中で目を覚ました。
分厚いカーテンの隙間から、薄っすらと明るい光が差し込んでいるのが見える。
少し埃っぽいその布団から顔を半分だけひょっこりと出して、首を動かして周りを見回してみた。
ベッドの下で、誰かが寝息を立てている。
そこには昨日出会ったばかりの先輩が、毛布をかぶって寝息を立てていた。
あぁ、そう言えば僕は昨日あの後、半ば強引にこの家に連れてこられたっけ。
だけどあの時、この先輩が言ってくれた言葉が、少しだけ僕の心を温かくしてくれた。
初対面のこの人は、僕が東京に来て初めてあんな風に言ってくれた。
そして、不器用な親切を僕に施してくれたのだ。
でも、本当に良かったんだろうか。
僕が、この人のベッドを使わせてもらってしまって。
「俺は、別にどこでも寝れるからさ」って笑って言ってたけど、心苦しいな。
お礼を言って、早く出ていくべきだろう。
だけど起こしてしまうのも申し訳ないし…。
このまま黙って行ってしまうか…。
同じ高校と言っても、学年は違うし、この人は引きこもりだし、三年生ということはあと数か月で卒業し、あの高校に来ることはもうなくなるはずだ。
それに…。
僕と出会うことなんて、もうこれっきり無いと思う。
だから僕は、ゆっくりと布団を自分の体から剥がして起き上がると、下で寝ている先輩を踏まないように慎重に足を下ろしてベッドを降りた。
この部屋の住人の先輩の勉強机の椅子に、僕のブレザーが掛けてある。
それを物音を立てずに手に取ると、出口へ続く扉へと向かった。
本当に、ありがとうございます
声を出さないように口を動かし、一礼をして、扉のノブに手をかけた。
でも、その手がノブを回すことはなく、僕は突然家の中に鳴り響いたインターフォンの音で「うわっ！」と、大きな声を上げて飛び上がってしまった。
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作者名：milkssss | 作成日時：2020年1月11日 18時
