＊＊＊＊＊＊ ページ32
俺の学校は体育館で卓球、バスケ、もしくは校庭でサッカー、ソフトボールが選択できる。
サッカーは論外として、俺が選んでいるのはもちろん佐野君と同じ種目だ。
それは、体育館で行われるバスケットボール。
運動は好きではないけど、スポーツをしている佐野君というのはやっぱり格好良い。
その顔は疲労感に満ちて、覇気はないのだが。
もっと元気があれば、もっと格好良いんだろうけど、こうやってバスケをしている佐野君を見られるだけで、俺は幸せを感じていた。
当の佐野君には、申し訳ないけれど…。
「はぁ…」
ことあるごとに、佐野君は辛そうに誰にも聞こえないようなため息をついている。
きっと、板垣君のことを考えているんだろうと思う。
授業が進むにつれて、佐野君の集中力もなくなって、ほとんどボールも触らなくなってきている。
あの顔をする佐野君は見ていて辛い。
俺に、何かできることはないのかな…。
しかし、その時の俺は気づいていない。
俺自身も全然バスケになど集中していないってことに。
俺が佐野君の横顔に見惚れていると、「吉田！危ないぞ！」という体育教師の声と共に、顔面に強い衝撃を覚えて、視界がぐらつく。
そしてそのまま俺の体はバランスを崩して体育館の床に倒れこんだようだった。
かけていた眼鏡が吹き飛んだのか、眼前はぼんやりとしていて、なにが起こったのか全く分からない。
「仁人？！大丈夫か？！」と、誰かが俺のすぐ目の前に駆け寄ってくるのが見える。
視界がかすんでいても、声で分かる。
さっきまであんなに元気がなかったのに、彼は一生懸命倒れた俺の体を抱き起して、必死の形相で俺に呼びかけている。
だから、君の事が好きなんだ。
俺なんかの為に、こんなに一生懸命になってくれるんだから。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 38人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：milkssss | 作成日時：2020年1月11日 18時
