真夜中の訪問者。【五条悟】 (ページ8)

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街頭だけの灯る夜道を歩く.

歩くといっても、歩いているのは悟だけ.
私は立って歩くことすら出来なくて、彼におぶられていた.

『やっぱ……、悟は強いね』

「当たり前」

普段よりも少しばかり低い声.

怒っているのだろうか.
彼の後頭部しか見えないから表情は分からない.

準1級相手だというのに、あの1発で倒してしまったのを目の当たりにして、格が違うってことを思い知らされた.

『 ……悟』

「何」

『助けてくれて、ありがとう』

「 ……お前に死なれたら、困るしな」

『 ……っえ？』

思いがけない言葉に驚いた.

呟くような、小さな声だったけど、
ちゃんと私の耳に届くようなボリュームだ.

どういうつもりで言ったのか.
その時の私には到底理解できなかった.

「 ……A 」

『な、なに？』

普段は、「おい」とか「お前」が殆どだから、
いきなり名前で呼ばれて驚いたほんのし少しだけドキッとした.

「もう寝ろ」

『は？』

「高専まであと少しかかるし、お前ボロッボロで
ろくに体力も残ってねぇんだから休んでろ」

口は悪いけど、言っていることは優しい.

悟らしからぬ優しい言葉に、胸の奥がじんわり暖かくなった.

『 ……そうさせてもらう』

多分、いつもなら何かと理由を付けて強がっただろうけど今回ばかりは本当にそんな余裕はなかった.

ためらうことなく、
ゆっくりと、悟の肩口に身を預けた.

一度きりだけ身を預けた彼の背中は、
大きくて、何よりも頼もしかった＿＿.

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