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kj side
今度は舘さまに同じ質問をしてみる。
dt「俺が料理を好きになったきっかけはね、すごい月並みだけど、俺がつくった料理を美味い美味いって食べてくれた人がいたからなんだ」
「それってもしかして…」
dt「…お察しの通り渡辺翔太って言うんだけど…まあそれは置いといて、俺そういう風に人を笑顔にするのが好きだからさ。
その感覚が忘れられなくて、もっと多くの人に笑顔になって欲しくて、料理の道に進むことを決めたんだ」
こちらも、包み込むような優しさの持ち主であり、実はボケたがりでもある舘さまらしい答えだ。
「でも、前に勤めてたホテルではあんまりいい料理が作れなかったんだっけ」
dt「そうそう。だからこの店に来たの。今は好きな料理が出来て、お客さんにも笑ってもらえて、俺すごく嬉しい」
確かに、俺が金賞取った写真も、お客さんみんないい顔してるもんなあ。
俺も写真で誰かの心を動かすことが出来るだろうか。
続いてそこにやってきたのは阿部ちゃん。
ab「俺は医者にだけはならないっていうのが先にあったから特殊なんだよなぁ…会計士を選んだのは、自分に向いてて一生出来る仕事だと思ったからなんだけど」
そうだった。阿部ちゃんは大病院を継ぐという敷かれたレールから逃れるように進路を決めたんだっけ。
ab「…あ、でも今改めて考えてて思ったんだけど、あの時俺が判断基準にしたのって結局、その仕事をしている自分が好きかってことなんだろうな。
俺は嫌々医者やってる自分より、会計士として信念を持って働く自分でいたかったし、今だってこの店でお客さんと触れ合ってる時の自分のことはすごく好きだなって思うもん」
kj「なんや、自画自賛やん」
俺はそうツッコみながら、内心さすが阿部ちゃんだなと思う。
なんたって、状況が特殊すぎて全く参考にならないかと思いきや、最後にはめちゃくちゃ的確なアドバイスをしてくれたのだから。
そんな俺の気持ちを見透かしたように、阿部ちゃんが続ける。
ab「参考になった？
ならよかった。でも実は、康二の今の状況に一番近い経験をしてるのは翔太だと思うんだ」
「えっ、偶然にも最後1人残ったのが翔太くんやで。俺持ってんなぁ」
ab「ふふっ。康二こそ自画自賛。ほら、早く話聞いておいで」
その言葉に押されるように、俺は翔太くんの方へと歩き出した。
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作者名：わかめ
| 作成日時：2020年2月22日 11時
