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阿部ちゃんと隣同士でシートに寝転がる。
久しぶりに2人でゆっくりとした時間を過ごせて、すごく幸せな気分だ。

ab「さっきのふっかの耳打ち、なんて言ってたと思う?佐久間にたくさん構ってやって、だってさ。何つう言葉選びだよ」

…え?今なんて言った?
もしかしなくても、ふっか、俺のこと気付いてた…?

一気に酔いも覚め、固まる俺に、阿部ちゃんが不思議そうな視線を向ける。
ab「どした?」
「いや、なんでもない。星、楽しみだね」

上手く誤魔化せただろうか。

ab「俺、冬の星座って好きなんだ。なんか華やかでさ」
「阿部ちゃん星座も詳しいんだ。俺、勉強苦手だから、そういうのも全然で」
ab「詳しいってほどじゃないけど…例えばこんな伝説があってね」

そう言って阿部ちゃんが教えてくれたのは、冬の大三角形に関する神話だった。


オリオン座のペテルギウス、おおいぬ座のシリウス、こいぬ座のプロキオンからなる冬の大三角形。

オリオンは狩りの名手で、天の川を渡って狩りに行こうとしていた。
オリオンにはお供として2匹の犬がいたけれど、子犬の方はまだ小さくて、天の川を渡れない。
そこでオリオンは、大きな犬だけを連れて狩りに行ってしまった。だから、オリオン、大犬と子犬の間に天の川が流れているんだ。
そして、今でも子犬は、天の川の向こうでオリオンと大犬の姿を寂しく見つめている…


そんなことを話しているうちに、消灯時間を迎える。

ab「綺麗…あ、あれがそのシリウスだよ。全ての星の中で一番明るいんだって。
そういえばさっきさ、佐久間がダウンしてるとき、ちょっと犬に似てんな、なんて思ったんだよね」

阿部ちゃん、このタイミングでそれは無しだよ…
「まるで取り残された子犬ってか。切ねえな」

冗談めかして言ってみるけれど、自分の発した言葉に引っ張られて気持ちが沈んでいく。
さっきまでの幸せが嘘みたい…満天の星空の輝きとは対照的だ。

ab「え、ちょっと待ってどうしたの?!泣いてる?!」

テンパる阿部ちゃん。え、俺今泣いてんの…?

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作者名:わかめ | 作成日時:2020年1月27日 9時

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