僕たちの帰る場所2 (ページ7)

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ab side

nb「みんな、ちょっといいか」
珍しく翔太からお呼びがかかった。舘さまが不在のこのタイミングで声をかけてくるところを見ると、さっきの件を受けて何か話があるんだろう。

nb「さっきは空気悪くしてごめんね。俺ついかっとなっちゃって」
sk「いや、翔太は悪くないじゃん。流石にちょっとびっくりはしたけど」

nb「ありがと。それで、涼太のことみんな気にしてくれてると思うんだけど、あいつがあそこまでこだわるの、ちょっと理由があるんだ」

そう切り出した翔太が語ったのは、舘さまが前に勤めていたホテルでの出来事だった。
コストカットを命じられたこと。抵抗しようとしたけれど叶わず、逆に孤立してしまったこと。結局、自分の納得のいく料理が作れなくなったこと。そして、料理人として、それをすごく後悔していること。

それなら、やっと心置きなく料理が出来ると思ったこの店で同じことが起こって相当堪えただろう。
舘さまは寡黙だし、多少のことは我慢できてしまう性格だからなかなか見えづらいけど、それでも、こんなに近くにいて気付けなかったなんて情けない。

fk「もしかして、この店作るとき、舘さまが独立を考えてたってちらっと言ってたのも、それが原因？」
nb「多分」
fk「まじか…俺そうとは知らず、嫌な頼み事を」
ふっかが呆然と座り込む。

nb「いや、俺も涼太もきちんと話してなかったし。特にあいつは溜め込んでキレる癖あるからな」
sk「確かに～」
フォローする翔太におどける佐久間。本当にこいつは、いつでも変わらない。

nb「ふはは。さっきのだってきっと本心じゃないはずだし、俺がいうのもなんだけど、涼太のこと嫌になったりしないでくれたらなって思って」
iw「ありがとな。でもそれは心配すんな」
nb「そっか。そうだよな」

そりゃそうだ。みんなちゃんとわかっているから。
ピンチの時こそ、俺たちの絆が改めて感じられる。

「それからさ、舘さまの負担減らすためにも、みんなもコスト削減の方策何か思いつくことない？」
fk「あー俺からもアイデア頼む。俺と阿部ちゃんだけじゃ限界あってさ」
nb「それがねー、話聞いてから俺らも考えてんだけど…」

話が前向きになったところで、ガチャっと扉が開き、舘さまが帰ってきた。