僕たちの帰る場所2 (ページ5)

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相談するとは言ったものの、気が重い。

舘さまも照も、自分の理想のメニュー像をきちんと持っている人だ。そして、2人のそんなこだわりがあったからこそ滝沢さんの融資だって降りたし、お店の評判も上がった。
なのに、都合が悪くなったら、コスト削減のためにそのこだわりの料理を変えてくれなんて、掌返しもいいところ。
俺としても、出来ればやりたくないんだけれど…

ある日の営業時間終了後、2人を呼び止める。
「舘さま、照、ちょっといいか」
dt「どうしたの、改まって」
「うん、メニュー担当の2人に頼みたいことがあってさ…」
iw「何だよ歯切れ悪いな」
「ああ、ちょっと言いにくいんだけどさ、今、店の経営状況がちょっと厳しいんだ。それで、原材料費を下げられないかって相談なんだけど」

そう言うと、照は一瞬驚いたような顔をする。
一方の舘さまは、予想がついていたのか落ち着いた表情。しかし、明らかに落ち込んでいる。

dt「ああ、うーん…」
「もちろん、俺だって2人に好きなように料理してほしいし、こんなこと頼むのはすごく心苦しいんだけど、今のままだとちょっとどうしても厳しくて」

iw「どれくらい足りてないの？」
「これくらいかな」
俺は阿部ちゃんからもらった資料を取り出すと、2人に見せる。

iw「あー、これなら、俺のほうは仕入れる酒の種類絞ればなんとかなると思う」
「本当か照」
「うん、作れるカクテルのバリエーションはちょっと狭まるけど、ほとんど注文されないメニューとかもあるし、数揃えるために使う酒の質が落ちるよりはその方がいい」
「その辺は照の裁量に任せるわ。マジで助かる」

iw「舘さまはどんな？」
dt「うーん、ちょっと厳しいかもしれない。仕入れる食材減らすといろんなメニューに影響しちゃうし…まあとにかく、代用できる食材とか、安く仕入れられる店とか探してみるから、ちょっと時間もらえる？」
「もちろん。本当に申し訳ない」
dt「ふっかが謝ることでもないでしょ」

どうなるかと思ったけれど、舘さまは相変わらず紳士だ。少し時間はかかりそうだけど、でもとにかく話せたのは一歩前進といったところだろうか。

舘さまを待つ間、俺もできることを考えないと。