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最初はタダと背中を守り合うようにしていたが、いつの間にか離されていた。
遠くで膝を着くタダが見えてそちらに走る。
タダの後ろから鉄パイプを振りかぶる男の脇腹に飛び蹴りをしてタダの腕を掴んで立たせる。
『立て!!死ぬぞ!』
「すみません」
タダが立ち上がらのを見届けて振り向くと拳を振り上げる男の姿があった。
ヤバイと思った時には遅く、左頬を打たれて吹っ飛ぶ。
「Aさん!!」
『…っ…問題ない』
「さすが女でありながら六本木を束ねている事はあるな
タフだ
こちらは1/4ほどやられてるにも関わらずやっと1発とは」
プッと血を吐き捨てて口元を拭う。
『行けるか?タダ』
「はい」
全員がグッと腰を落として臨戦体制になった。
背中を合わせながら戦うほどの余裕もないまま1人、また1人と伸していく。
1人の頭を掴んで膝を入れて投げ捨てた時、そう遠くない場所でパトカーのサイレンが聞こえた。
『…まずい、この先は袋小路だ』
捌けろ!!と誰かが叫び、入り乱れる。
押し寄せるパトカーにパニックになりながら逃げ回るスーツ男達の中に、私の元へ走ろうとするタダを見つけた。
後ろからは赤く光るランプが見えつつある。
『来るな!!
逃げろ!!!』
「Aさん!!」
『一緒に逃げたら捕まる!!!』
ドンッと走ってきたスーツに肩をぶつかられて後ろによろける。
『お前はいけ!!!!
私は大丈夫だから!!!!
命令だ!逃げろタダ!!
お前まで私の前で捕まるんじゃねぇ!!!』
ーー
ーーー
そこからは死に物狂いで逃げた。
物陰に隠れながら細い通りを選んで逃げて、走って、叫び声とサイレンが聞こえないほど遠く遠く走り続けた。
路地裏に入り、壁にもたれて息を整える。
足も手も髪も服もボロボロだ。
『ふふ
バチが当たったかな』
上を見上げて狭い夜の闇を見上げた時、ポタリと鼻先に水が落ちてきた。
『…泣きっ面に蜂だな』
自分から飛び込んだ裏社会。
利用されて捨てられた現状に悔しさが滲む。
ひどくなった雨足にゆらりと路地裏を出る。
限界だった。
愛する弟がいない事も。踏み入れた裏社会で1人で灰谷を背負い、気を張っていなければいけない現状も。
蘭と竜胆は私のこんな姿を見たらなんて言うだろう。
頑張ったと言ってくれるだろうか。
ここがどこかもわからないまま、ぽてぽてと俯きながら宛てもなく歩いた。
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玉兎(プロフ) - なるさん» はっ!!(*゚ロ゚)!! ありがとうございます!!✨✨ 頑張ります!!🥰 (2022年8月18日 12時) (レス) id: 2cb29c266f (このIDを非表示/違反報告)
なる - やっぱりこのシリーズとっても面白い!! これからも頑張ってください(^_^) (2022年8月18日 11時) (レス) @page25 id: 4373cfedf7 (このIDを非表示/違反報告)
玉兎(プロフ) - 久遠さん» いつも楽しみにしてくださって嬉しいです!ありがとうございます(⌯˃̶᷄ ⁻̫ ˂̶᷄⌯)✨✨ (2022年5月25日 21時) (レス) id: 99723d5af6 (このIDを非表示/違反報告)
久遠(プロフ) - 蘭ちゃんに一体何が…続きが気になります✨ (2022年5月25日 15時) (レス) @page48 id: d025dfcb18 (このIDを非表示/違反報告)
玉兎(プロフ) - 久遠さん» 久遠さんいつもありがとうございます! かなり増えましたね笑 (楽しくてつい書き込んでしまった…) 5も引き続きよろしくお願いしますね♡(≧ω≦ ) (2022年5月24日 20時) (レス) id: 99723d5af6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉兎 | 作成日時:2022年5月14日 14時