透明な果肉【2】 ページ3
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人は木になりながら命を燃やし続けるのだろうか。どこまで人でいられるだろうか。守は落ち葉だらけの地面に腰を下ろす。哲学的な事を考えたりするのは嫌いだったけれど、隣で弱々しくいるAを見ると考えてしまった。
「怖くないのかよ」
「こわいよ」
そっか。守は相槌を打った。Aは少しも泣かなかった。
こわいけど、その為にまもるがいるのよ。私たちはそうやって幾つもの時間を生きてきたから。ねえ、しっかりおやりね。きっとそばにいるわ。
思えば守は、この林がいつから存在するのかよく思い出せない。どうして今まで気づかなかったのだろう。守はAと会うまで林の存在を知らなかった。そしてとうとう、Aは学校に来なくなった。
守はAの名前を呼んだ。反応はなかった。しかしそこに転がる少女は死体ではないのだ。これからきっと神になる。守はとにかくそう思った。きっと人間は神様になっていく。清ければ清いぶんだけ早く。守はAをもう一度呼んだ。返事はなかった。神様の森を作っていくのだ。自分もそうなることを思って守は豆だらけの固い手のひらを握りしめた。
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そうして、ついにAは霞が如くいなくなってしまった。消えてしまった。人間では無くなってしまった。この林の一部になってしまった。どこにも居ない。もうAはAでない。守は林の中を歩き始めた。樹齢から大体の目星はつけられても守にはどの木がAなのか少しも分からなかった。守は『寂しい』とは思わなかった。でも、ちょっとだけ涙が出た。
「(……)」
ぱしゃり。カメラのシャッターを切る。やがて林はどんどん広くなって、地球は森の衣をかぶるかもしれない。守はAの写真が一枚もないことに気付いた。彼女を証明するものは無いことに気付いた。
だから……Aの木に果実が実るといい。Aのような実がなるといい。透明で綺麗な実。ほんのひとつだけでも実ってくれたなら。そこにAがいた根拠。守は林の中をしばらくさ迷って、そのうち疲れてしまった。適当な木にもたれかかって休憩する。
こんな寂しい所に実はならなかった。神様は涙のひとつさえこぼさなかった。ただ本当に、どこか果実が実るなら中身は透明なのかもしれない。AAのように透けているのかもしれない。
──守は涙を拭いて立ち上がり歩き始める。守は歩かねばならない。守は受け継がなければならない。守は、生きねばならない。
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ヅカ(プロフ) - 蒼依さん» 返信が遅くなってごめんなさい！ 作者です。シャボン玉みたいな短編集、、、ウレシ〜です！♡ 過去に書いた拙い話も多く載っていますが、好きになってくれてありがとうございます！ よろしければこれからもいらっしゃってくださいね(^-^)v (6月14日 22時) (
レス) @page29 id: 841dbd16f5 (このIDを非表示/違反報告)
蒼依 - 確かに不穏なものが多めですがそこがラヴだしあたしこういうシャボン玉みたいな短編集好き^ - ^ 金魚のはなしいいですね！！！💖 (2023年2月2日 0時) (レス) id: 210e1b584c (このIDを非表示/違反報告)
ヅカ(プロフ) - つぉいさん» 本当にありがとうございます嬉しいです泣泣 私はその言葉でまた書いていけます(; ;) これからも気が向いた時に見にきていただけたら幸いです！ 新しい話書こ〜〜〜〜〜〜〜︎（◜𖥦◝ ） (2022年10月16日 18時) (レス) id: 841dbd16f5 (このIDを非表示/違反報告)
つぉい - 文字の、ひとつひとつに、綺麗な光が灯っていてとてもとてもうつくしいなあと思いました。ありがとうございます。 (2022年10月9日 2時) (レス) id: 4f84d41f05 (このIDを非表示/違反報告)
ヅカ(プロフ) - りんさん» やったー！！ 応援ありがとうございます(;-;) 気まぐれな更新にはなってしまうと思いますが付き合っていただければ幸いです！ コメントありがとうございましたp(^-^)q (2021年3月7日 23時) (レス) id: c875d84994 (このIDを非表示/違反報告)
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