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｢そや、牛丼冷めてしもたかもしれへんな…｣
テーブルの上に置かれた牛丼の存在を忘れていた
｢しゃあないレンジであっためるわごめんな｣
｢あ いえお構いなく……｣
温められたホカホカの牛丼はバイト終わりの身体に染みた
「名前聞いてもええ？」
「私の名前ですか？」
「そう ほかに誰がおるねん」
ふふっと笑われた こんな顔もして笑う人なんだ
「Aです」
｢俺は公大｣
「Aちゃんは何回生？」
「えと2回生で国際文化です 公大さんは？」
「俺は3回生で経営の方の学部」
｢まさか同じ大学の人なんて俺も思わんかったわ｣
｢それは私もです｣
「よね、Aちゃんお酒飲める？」
｢そんなに強いのじゃなければ｣
｢うん、ちょっと付き合ってね｣
｢はーい｣
コップに注がれた少し薄めのアルコール
｢これ飲みやすいでしょ？｣
｢ん、、確かに美味しい…｣
「で、さっきの話」
｢魔除けなら出来ると思うのよ俺｣
｢魔除けですか〜……どんな感じで？｣
「具体的なプランはないんやけど俺と一緒にいて歩いたりするだけでもあの人は近寄って来ないと思うんやけど…」
「思い込みかもしれへんけど男がいると案外手を出せへんのよね」
「しかもこの見た目やしね」
｢な、なるほど……｣
「でもこんな私なんかにそこまでする人じゃないと思うんですけど…」
｢……なんでさっきの店にその人が来てたんやと思う？｣
「たまたま私のバイト先でご飯…………………」
｢たまたまであんなことすると思う…？｣
｢……｣
｢頼れるやつには頼っとき守るから｣
｢…ありがとうございます…………｣
自然と涙が出た
こんな私でも守ろうとしてくれる人がいるなんて
死にたいなんて
思っていた
けれどまだ死ぬのは早い
時間の許す限り公大さんと過ごしてみたい
と思うようになった
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作者名：アイコ | 作成日時：2019年7月25日 23時
