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108:突然の別れ<雪村千鶴> ページ16

慶応4年4月。

私たちは旗本屋敷の屯所から、
流山にある長岡邸へと移転してから数日後のある日。


京はここに移動した一部の隊士さんを引き連れて、
斎藤さんと沖田さん、Aは"教練"に出掛けている。

Aが同行するなんて珍しい事だけど、
それは斎藤さんが衝動に駆られた時の為だと思う。


おかげで、
今日の長岡邸は普段より少し静かだ。


そんな私はお茶を持って、
近藤さんのお部屋へ向かっていた。

この長岡邸に着いてからというもの、
近藤さんは別人のように覇気を無くしてしまっていて、
部屋に籠って本を読んでいるか、
縁側で草花を眺めるだけの日々を送っている。


縁側に腰掛けて外を眺めている時の近藤さんは、
まるAを彷彿とさせた。

そのAも今でも縁側が定位置で、
Aと近藤さんはお茶仲間のようになっていたりもする。




千鶴「近藤さん、雪村です」

近藤「雪村君か、入りなさい」




襖を開けて部屋へ入ると、
今日はAがいないからなのか、
近藤さんは机に向かって本を読んでいた。

まるで、隠居生活だな…。

なんて思っていたけど、
それは言ってはいけない空気がここには流れているから、
口に出す事はなかった。




千鶴「今日は本をお読みになっているんですね」

近藤「A君もいないからな」

千鶴「何を読んでいらっしゃるんですか?」

近藤「三国志演義や、清正記、
軍記物の読み物ばかりだよ」




「覚えるほど読んでいるんだがな」

なんて、少し笑いながら話してくれるけど、
その笑顔にやはり覇気はない。


近藤さんが座っている机にお茶を置き、
その隣に立って開かれている本を覗き見た。

それに気づいたからなのか、
近藤さんは本を閉じてお茶に手を付ける。




千鶴「すみません。
覗き見みたいな事を…」

近藤「いや、雪村君も読むかい?」

千鶴「いいんですか?
近藤さんがお好きな本なら面白そうですし、
読んでみたいです」




差し出してくれた一冊の本を手に取り、
ペラペラと捲っていた時だった。

急に部屋の襖が勢いよく開き、
そこから血相を変えた土方さんと
島田さんが飛び込んでくる。

何事かと二人でそちらを見ると、
土方さんが眉間に皺を寄せながらこう言うんだ。




土方「すぐ逃げる準備をしてくれ。
ここは敵に囲まれてる…っ!」

千鶴「ど、どういう事ですか?!」




ペラペラと捲っていた本を落としそうな程の驚きだった。

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斎藤ようこちゃん(プロフ) - 素敵だよ。涙が流れます (2020年5月24日 23時) (レス) id: e53507092f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:まほろ | 作成日時:2019年9月26日 17時

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