【薄桜鬼】純血を巡る者３ (ページ39)

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斎藤「雪村、行くぞ。
このままでは回り切れない」

千鶴「あ、すみません」

斎藤「A、あんたも一人では迷子になる。
ついてくるか？」

A「いえ、私は平助君と一緒に来ていますので
大丈夫です。ありがとうございます」

平助君の名前を出せば、
斎藤さんは周りを見回してその姿を探している。

すると、何処からともなく平助君は姿を現し、
バツが悪そうに頭を掻いていた。

藤堂「ごめんごめん、出る機会を逃しちまってさ」

斎藤「平助、目を離すな。
Aは極度の方向音痴だ。
見失ったら最後、見つける事は困難だ」

A「斎藤さん…。それは言い過ぎでは…？」

斎藤「本当の事だろう？」

藤堂「え？！一君が、笑った？！」

確かに笑った…っ！

あの斎藤さんが、
目に見えて分かるほどに笑った！

斎藤さんって、こんなに優しく笑うんだ…。
もっと笑ってくれたらいいのにな…。

私たちは二人と別れ、千姫様ともう一度向き合う。

千姫「薫さんから聞いたわ。
薫重さんから任命されたんですってね。おめでとう！」

A「ありがとうございます。
その事で、これから兄様に会いに行くんです」

千姫「そうだったのね。
私の出席するから楽しみにしているわ」

A「はい！よろしくお願い致します」

藤堂「なあ、何でAはあんたに対して遜(へりくだ)ってんだ？
あんた、そんなに偉い人なわけ？」

A「平助君！」

千姫「いいのよ。
私たちが鬼の代表を務めていたのは遠い昔の話だもの。
今では頭領である、あなたと風間が二大巨頭じゃない。
私に対してそこまで丁寧に話をするのは、雪村家だけよ」

そう言われても…。

小さい頃からの癖っていうのは、
なかなかに抜けないものだ。

特に父様は、千姫様には失礼のないように。
って口酸っぱく言っていたぐらいだし…。

千姫「ごめんなさい。
薫さんに会いに行く途中だったのよね」

A「大丈夫ですよ。
千姫様に会えた事、嬉しく思います」

千姫「ねえ、もうその言葉遣いは止めましょう？
あの頃は薫重さんもいらしたから言えなかったけど、
私とAちゃんは同い年だし、
もっと仲良くしたいわ！」

A「……言葉は努力します。
私も、千姫様と仲良くしたいですから」

千姫「次に会う時は楽しみにしているわね。
じゃあ、また今度！」

A「はい！」

千姫様はヒラヒラと手を振って去って行った。