３４：干し物 ページ31
井戸で筆を洗い終え、
また来た道を戻って
山南さんの部屋へと向かっている。
一度にこれだけの量の筆を洗ったのなんて初めてだ。
手ぬぐいを広げた時は驚いた。
全部同じような筆だと思っていたんだけど、
手ぬぐいの中に入っていた筆は
穂の太さも長さも全部バラバラだった。
A「筆を洗い終えましたけど、どうしましょう？」
山南「申し訳ないのですが、そこへ並べて頂けますか？」
A「分かりました」
山南さんはそう言って、
もう一度手ぬぐいを渡してから部屋へ戻って行った。
言われた通り、
縁側に渡された手ぬぐいを広げて筆を並べる。
筆についていた糊が落ちないように
洗ったつもりだったけど、数本は下りてしまった。
乾いた後に糸で補強しないと使いづらいだろうな…。
永倉「精が出るねえ。
それにしても、山南さんの筆の量は相変わらずだな」
筆の事を考えていると、
頭の上から永倉さんの声が降ってくる。
肯定するように頷くと、
「山南さんの拘りだからな」と付け加えられた。
やっぱり拘りなんだ。
几帳面な人だとは思っていたけれど、ここまでとは…。
永倉「千鶴ちゃんが干場で待ってるって言ってたぜ」
A「分かりました。
これが終わったら行きますね。ありがとうございます」
そう伝えると、
永倉さんはスタスタと歩いて去って行った。
全ての筆を綺麗に干し終え、
山南さんに一言声を掛けてからその場を後にした。
干場に来たんだけど、
姉様の姿がどこにも見当たらない。
もしかして、来るのが遅すぎちゃったのかな？
なんて考えたのだけど、
そこには山盛りに積まれた洗濯物が置いてあるし、
終わったわけではなさそうだ。
きっと戻ってくるだろうと考え、
姉様が戻ってくるまでの間、
そこに置いてあった洗濯物を干し始めた。
大掃除のおかげで普段は出てこないような物も
洗濯物の中に入っている。
この量をを一人で干そうと思うと難儀だ。
すごい量の洗濯物だけど、
これを姉様一人で洗ったのかな？
干し始めたのはいいけれど、山盛りに積まれた上の方は
少しだけど乾いてきている。
これ、いつ洗った物なんだろう…？
千鶴「ごめん！干しててくれたんだね」
A「私こそごめんね。
こんなにたくさんの洗濯物を一人で洗わせちゃって」
千鶴「ううん。それ、私が洗ったわけじゃないから」
ん？じゃあ、誰が洗ったんだろう…？
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 107人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
斎藤ようこちゃん(プロフ) - き。気になります。 (2020年5月23日 9時) (
レス) id: e53507092f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まほろ | 作成日時：2019年8月31日 3時
