ヨコハマギャングスタアパラダヰス -12- ページ32
樋口は銃の乱射を再開する。
「くっ!」
激しい音を経てて発砲するも、
「!?」
目の前の谷崎は血を流すことなく、霧の様に消えた。
「ボクの『細雪』は────
雪の降る空間そのものをスクリーンに変える」
「なっ……何処だ!」
「ボクの姿の上に背後の風景を『上書き』した。
もうお前にボクは見えない」
「しかし……姿は見えずとも弾は中る筈っ!」
樋口は、谷崎をもう認識できないと判り四方八方に発砲を始める。
「大外れ」
真後ろから声がし、首に手が掛かる。
「──ッ!?」
「死んで終え!」
手に力を込め、樋口を絞め殺しにかかる谷崎。
「くっ……あ」
ゴホッゴホッ…
ふと、咳き込む声が聴こえた。
途端に谷崎がその場で崩れ落ちる。
「死を惧れよ」
「殺しを惧れよ」
「死を望む者
等しく死に望まるるが故に────」
谷崎の背中に刺さっていた黒い獣のような物が男の元に帰る。
────こいつには遭うな。遭ったら逃げろ。
────俺でも……奴と戦うのは御免だ。
敦の脳裏に、国木田の言葉が反芻した。
「な────」
そこには、国木田に見せられた写真の男がいた。
「お初にお目にかかる。
そこな小娘と同じく卑しきポートマフィアの狗……ゴホッゴホッ」
「芥川先輩!ご自愛を!此処は私ひとりでも!」
芥川は無言で樋口に平手打ちを喰らわせる。
乾いた音が響き、その拍子に彼女の掛けていたサングラスが吹っ飛んだ。
「人虎は生け捕りとの命の筈。片端から撃ち殺してどうする。
役立たずめ」
「────済みません」
「人虎……?生け捕り……?あんたたち一体…」
「元より僕らの目的は貴様一人なのだ
人虎」
芥川は地に伏す谷崎とナオミを指す。
「そこに転がるお仲間は────
いわば貴様の巻添え」
「僕のせいで皆が────?」
「然り。それが貴様の業だ人虎。
貴様は生きているだけで周囲の人間を損なうのだ。
自分でも薄々気がついているのだろう?」
「そんな…」
孤児院での辛い記憶。
泣くことも、甘えることも、愛されることも、許されなかった。
「────黙れ」
凛とした声と銀髪が揺れる。
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水無月碧音(プロフ) - 蓮(ルイ)さん» 覚えました!宜しくお願いします。最近少し忙しいですが次からは続編なので頑張ります! (2018年5月7日 23時) (レス) id: f79b747f8a (このIDを非表示/違反報告)
蓮(ルイ) - 名前が変わっていると思いますが一応ルイです!これからは蓮です!更新楽しみにしています! (2018年5月7日 23時) (レス) id: aeb99a7d73 (このIDを非表示/違反報告)
水無月碧音(プロフ) - ルイさん» ありがとうございます!暇つぶしで描いている絵を褒めていただき嬉しいです!頑張ります (2018年5月4日 18時) (レス) id: f79b747f8a (このIDを非表示/違反報告)
ルイ - 絵が凄いです!驚きました!更新楽しみにしています! (2018年5月4日 14時) (レス) id: aeb99a7d73 (このIDを非表示/違反報告)
水無月碧音(プロフ) - 神無月碧依さん» そう言って頂き嬉しいです!頑張りました(笑) (2018年3月7日 17時) (レス) id: f79b747f8a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:水無月碧音 | 作成日時:2018年1月1日 22時