検索窓
今日:6 hit、昨日:0 hit、合計:86,653 hit

ヨコハマギャングスタアパラダヰス -12- ページ32

樋口は銃の乱射を再開する。

「くっ!」

激しい音を経てて発砲するも、

「!?」

目の前の谷崎は血を流すことなく、霧の様に消えた。

「ボクの『細雪』は────

雪の降る空間そのものをスクリーンに変える」

「なっ……何処だ!」

「ボクの姿の上に背後の風景を『上書き』した。

もうお前にボクは見えない」

「しかし……姿は見えずとも弾は中る筈っ!」

樋口は、谷崎をもう認識できないと判り四方八方に発砲を始める。

「大外れ」

真後ろから声がし、首に手が掛かる。

「──ッ!?」

「死んで終え!」

手に力を込め、樋口を絞め殺しにかかる谷崎。 

「くっ……あ」


ゴホッゴホッ…

ふと、咳き込む声が聴こえた。

途端に谷崎がその場で崩れ落ちる。

「死を惧れよ」

「殺しを惧れよ」

「死を望む者
等しく死に望まるるが故に────」 

谷崎の背中に刺さっていた黒い獣のような物が男の元に帰る。

────こいつには遭うな。遭ったら逃げろ。

────俺でも……奴と戦うのは御免だ。


敦の脳裏に、国木田の言葉が反芻した。

「な────」

そこには、国木田に見せられた写真の男がいた。

「お初にお目にかかる。(やつがれ)は芥川。

そこな小娘と同じく卑しきポートマフィアの狗……ゴホッゴホッ」

「芥川先輩!ご自愛を!此処は私ひとりでも!」

芥川は無言で樋口に平手打ちを喰らわせる。

乾いた音が響き、その拍子に彼女の掛けていたサングラスが吹っ飛んだ。

「人虎は生け捕りとの命の筈。片端から撃ち殺してどうする。

役立たずめ」

「────済みません」

「人虎……?生け捕り……?あんたたち一体…」

「元より僕らの目的は貴様一人なのだ

人虎」

芥川は地に伏す谷崎とナオミを指す。

「そこに転がるお仲間は────

いわば貴様の巻添え」

「僕のせいで皆が────?」

「然り。それが貴様の業だ人虎。

貴様は生きているだけで周囲の人間を損なうのだ。

自分でも薄々気がついているのだろう?」

「そんな…」

孤児院での辛い記憶。

泣くことも、甘えることも、愛されることも、許されなかった。





「────黙れ」





凛とした声と銀髪が揺れる。

ヨコハマギャングスタアパラダヰス -13-→←ヨコハマギャングスタアパラダヰス -11-



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 8.7/10 (125 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
148人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

水無月碧音(プロフ) - 蓮(ルイ)さん» 覚えました!宜しくお願いします。最近少し忙しいですが次からは続編なので頑張ります! (2018年5月7日 23時) (レス) id: f79b747f8a (このIDを非表示/違反報告)
蓮(ルイ) - 名前が変わっていると思いますが一応ルイです!これからは蓮です!更新楽しみにしています! (2018年5月7日 23時) (レス) id: aeb99a7d73 (このIDを非表示/違反報告)
水無月碧音(プロフ) - ルイさん» ありがとうございます!暇つぶしで描いている絵を褒めていただき嬉しいです!頑張ります (2018年5月4日 18時) (レス) id: f79b747f8a (このIDを非表示/違反報告)
ルイ - 絵が凄いです!驚きました!更新楽しみにしています! (2018年5月4日 14時) (レス) id: aeb99a7d73 (このIDを非表示/違反報告)
水無月碧音(プロフ) - 神無月碧依さん» そう言って頂き嬉しいです!頑張りました(笑) (2018年3月7日 17時) (レス) id: f79b747f8a (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:水無月碧音 | 作成日時:2018年1月1日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。