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或る爆弾 -1- ページ14

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一夜明け、Aは国木田と共に町へ出ていた。

「全く……太宰はこんな時間まで何をしているんだ!」

苛苛を隠せない国木田。

「さぁ……私は社員寮には住んでいませんから、瀟洒判りません」

Aは肩を竦めてみせる。

「あの小僧を社員にすると云い出したのは彼奴だぞ!」

「中島が起きるのを待って居るのでは?首でも吊り乍」

「……」





「……冗談の心算だったのですが」

真顔になって黙ってしまった国木田に詫びる。

「可能性が有り過ぎる」

一つ二つと胃痛の種を増やしていく国木田の眼に

「あ、国木田さん。あれ」

少し遠くで自慢げに自分の事を語っている太宰が映った。

「!!
ここに居ったかァ!」

そのすらりとした背中に叫ぶ国木田。

「この包帯無駄遣い装置!」

「ぐ、うわぁぁぁぁ!?」

「!(吃驚した…)」

「国木田君……今の呼び名やるじゃないか……」

どんな悪口も効かないと思われた太宰が一寸傷付いたらしい。

「誰が社の信頼と民草の崇敬を一身に浴す男だ!!お前が浴びてるのは!

文句と呪いと苦情の電話だ!!」

Aと敦が首を傾げる。

「え、え〜?私がいつ苦情なんて受けたかなぁ〜」

「八月某日入電

『お宅の社員さんが、海岸の漁業網に引っ掛かってるんだけど、引き取ってくんない?』」

渋い男の声。

「う"っ」

「九月某日入電

『うちの畑に変な人が埋まっとったんじゃが、そちらの同僚さんかのぉ?』」

こちらは見事に嗄れた老人の声。

「十月某日入電

『ウチの飲み代のツケ、ちゃんと払ってくださいね。半年分ですゥ』」

女性からだったのだろう、今度は裏声を披露した。

「(物真似巧いな…)」

「ッ…そ、そんな…」

反省したように見える太宰だが

「国木田君がこんなに物真似が巧いなんてェェ!」

決してそんなことは無かった。

「貴様ァァァ!!
人を馬鹿にするのもいい加減にせんかァ!!」

怒鳴る国木田の後ろから少し離れるA。

「!あ、Aさん。お早うございます」

「お早う中島」

「Aちゃぁぁん!」

太宰は国木田の後ろを着いて来ていたAに腕を広げて抱きつく。

「わっ…」

「嗚呼〜、柔らかい〜良い匂いする〜」

敦は視線を逸らした。僕は何も見ていない。

「非常事態だ!疾く来い!」

「朝から元気だなぁ。どうしたのさ」

「探偵社に来い!人手が要る!」

「何で?」

「爆弾魔が──

────人質連れて探偵社に立て篭った!」

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水無月碧音(プロフ) - 蓮(ルイ)さん» 覚えました!宜しくお願いします。最近少し忙しいですが次からは続編なので頑張ります! (2018年5月7日 23時) (レス) id: f79b747f8a (このIDを非表示/違反報告)
蓮(ルイ) - 名前が変わっていると思いますが一応ルイです!これからは蓮です!更新楽しみにしています! (2018年5月7日 23時) (レス) id: aeb99a7d73 (このIDを非表示/違反報告)
水無月碧音(プロフ) - ルイさん» ありがとうございます!暇つぶしで描いている絵を褒めていただき嬉しいです!頑張ります (2018年5月4日 18時) (レス) id: f79b747f8a (このIDを非表示/違反報告)
ルイ - 絵が凄いです!驚きました!更新楽しみにしています! (2018年5月4日 14時) (レス) id: aeb99a7d73 (このIDを非表示/違反報告)
水無月碧音(プロフ) - 神無月碧依さん» そう言って頂き嬉しいです!頑張りました(笑) (2018年3月7日 17時) (レス) id: f79b747f8a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:水無月碧音 | 作成日時:2018年1月1日 22時

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