【あんスタ】オレの隣の湊さん2【漣ジュン】 (ページ19)

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湊先輩が歌い終えると、共演陣やスタッフから拍手が送られる。

その拍手が鳴り止むまで、先輩は顔を上げることなく深々と礼をしていた。

「お疲れ様です。湊先輩」

「瑠依くん。とっても良いステージだったね」

ステージから捌けた先輩に話しかけるも、先輩は何も言わずにオレたちを泣きそうな顔で見ていた。

湊さんの書いた歌詞を歌って、湊さんへの思いが溢れてしまったのかもしれない。

「っ……どんなにAちゃんのことを思って歌ったって、目覚めるわけないのにな」

半ば諦めたような湊先輩の顔。

それは、外傷は治ってきたものの、ピクリとも動かず目覚める気配のない湊さんを思い浮かべた表情だった。

目覚めると信じていても、心の何処かで諦めていたのが表面に出た瞬間で_______________

「ごめん……」

そう一言呟いて、先輩はスタジオから出ていってしまった。

いつもよりも小さく見える先輩の背中を見届けたところで、「我々もそろそろ」という茨の声かけでオレたちもスタジオを出た。

衣装から私服へ着替え、おひいさんの荷物を持って楽屋から出たとき、バンッと勢いよく隣の楽屋のドアが開いた。

出てきたのは、電話で誰かと話している湊先輩だった。

「はい……はい……Aちゃんが……！？はい……すぐ向かいます」

湊さんの名前が出てきた途端、オレもおひいさんも瞬時に反応しおひいさんは先輩に話しかけた。

「瑠依くん！！Aちゃんがどうかしたの！？」

バカデカいおひいさんの問いかけにも答えず、先輩は走ってテレビ局を出てタクシーに乗り込んでしまった。

それを追うように、オレとおひいさんは茨が呼んだ車に急いで乗り込むと、「あのタクシーを追ってほしいね！」とおひいさんが車を走らせた。

乗り込む前に茨が後ろから叫んでいたけれど、そんなことは全く気に止めてなくて、湊さんに”もしも”のことがあったんじゃないかと気が気じゃなかった。