恋を知らない二人

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『笑顔が可愛い人だね』



田中「ね。もっと笑って欲しいんだけどなぁ」



田中くんって家庭環境があんまり
良くなかったはずなのに



優しくて真っ直ぐで偉いなと思う



田中「もしかしてミツみたいな男
タイプだつったりする？」



『男性にも恋愛にも興味ない
きっと私は幸せな家庭なんて築けないし』



田中「えー、そんな悲しい事言うなよ」



『仕方ないじゃん。今まで恋なんて
したことないししたいとも思わない』



親に暴力を振るわれて
まともな生活じゃなかった



服も自分で洗濯する事を覚えるまでは
かなり汚かったから避けられてたと思う



それに近所でも有名な変な両親のせいで
学校では男女共に無視されて



先生は助けてくれなかった



卒業後に働いた先はセクハラオジサンばっかりで



そんな状態で恋をしたいなんて思うわけもない



普通の生活がしたい



監視もされず自分の稼いだお金は
自分の為に使えるような普通の生活がしたい



願いはただそれだけ




田中「ミツと同じ事言うんだね」



『えっ？』



田中「恋なんてする必要ないって
したことないって」



『へぇーそうなんだ。勿体ないね
モテそうなのに』



田中「平野だって勿体ないよ、美人なのに」



『美人なんて初めて言われたよ
愛想ないから誰も見向きもしないよ』



そう………私は恋を知らない



恋心なんて知る必要もない

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