181針 ページ41
いるわけない、それは分かってる。
でも声が聞こえたんだ……。
見渡してもこの部屋には私だけ。
『すぅ……』
大きくゆっくり、息を吸った。
そして──
パン!!!
両手で自分の頬を思い切り叩いた。
『……そうだね、私らしくない。
この程度……私ならどうってことない』
相当強く叩いたので頬は痛むが、その痛みが私の頭を冷静にしてくれる。
余計なことを考えてる時間は無い。
私に出来るのは、得た情報からこの先のことを予測して動くこと。
敦くんならどう動く?
与謝野さんならどう動く?
乱歩さんならどう動く?
──治くんなら、どう動く?
『敵は《天人五衰》だけじゃない。
探偵社を捕まえようとする邪魔な《猟犬》…』
──まずは、どうやって探偵社の無実を晴らす、かだ。
・
ベット脇に置いてあった鎮痛剤を飲み込んで、ベットから足を下ろした。
ひんやりとした床に足を付けて立ち上がる。
『ッ!!』
グラりと体が傾いたが、なんとか踏みとどまって大きく息を吐く。
本来なら絶対安静の重症だもんな……。
『まあ、今更気にする程じゃないけど』
それから、と目を向けた先には扉。
『抜け出すな、とは云われたけど…じっとしてられる程、私も善い子じゃないんですよ』
ぺたぺたと裸足のままで歩き、静かに扉を横に動かす。
首だけ廊下に出して右左を見る。
監視の姿も人の気配も無い。
『ん?』
ふと目線を落とすと、扉の目の前にあったのは、それなりに大きさのある箱だった。
罠、とも思えなくないけど…しゃがんで箱の蓋を開けた。
『……これは』
中に入っていたのは私の着替えと兜割りだった。
ご丁寧に洋服は似たようなものが用意されているし、兜割りは綺麗に磨かれている。
『………桜庭さんか』
どうやら、彼も私がじっとしているとは思わなかったらしい。
さすが、私の補佐を務めていただけある。
私は箱を持ち上げて病室の中に戻った。
洋服に着替えて灰色の外套を袖に通す。
頭、腕、腹部に巻かれている包帯の圧迫感が窮屈に感じるけど、気にしている暇は無い。
腕を軽く上げて掌を天井に向けた。
『【天空の蜂】』
異能力が発動して、針が出現する。
白く光る針はキリ、キリと妙な音を立てていた。
『………うん、大丈夫そうだ。
──《猟犬》に後れは取らない…』
針を消して私は病室を後にした。
・
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jumpcontrolbear(プロフ) - 砂漠のうさぎさん» コメントありがとうございます!なんと!!私の知らないところでこの作品の名前が上がっていたんですね!嬉しい限りです!!更新ゆっくりですが頑張っていきます!ありがとうございます! (2019年10月21日 0時) (レス) id: 34857aaa52 (このIDを非表示/違反報告)
砂漠のうさぎ(プロフ) - あるユーザーさんの紹介から飛んできて一気読みしました。原作の雰囲気を崩さないで新しいキャラが動いていて凄いと思いました。話の展開とか言葉のチョイスとかとても好みです…更新楽しみにしてます、頑張ってください!長文失礼しました (2019年10月20日 21時) (レス) id: ad3e66ea3f (このIDを非表示/違反報告)
jumpcontrolbear(プロフ) - 桜さん» コメントありがとうございます!!あけましておめでとうございます!!また動くみんなを見ることが出来ますね!相変わらずの亀さん更新ですがよろしくお願いします! (2019年1月5日 23時) (レス) id: 10ce31b7ea (このIDを非表示/違反報告)
桜 - あけおめです!今年ほ更新頑張ってください!作者さん文スト3期4月放送ですよ!来ましたよ!!いろいろと大変かもれませんが頑張ってください! (2019年1月5日 1時) (レス) id: c482d4ca60 (このIDを非表示/違反報告)
jumpcontrolbear(プロフ) - 桜さん» コメントありがとうございます!!番外編も読んでくださったんですね…(感涙)楽しんでもらえてなによりです!!亀更新ですが頑張りますので気長にお待ちいただけると嬉しいです! (2018年11月22日 9時) (レス) id: 10ce31b7ea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:だし丸 | 作成日時:2017年8月31日 11時