168針 ページ28
目の前に聳え立つ"白"は、清らかなモノでは無い。
幾重にも重なり高くから私を見下ろすようにするコレは正しく針山。
地獄の絵巻などに出てくる剣山にも見える。
その針は全て真っ白で、【天空の蜂】の針なのは考えなくても判る。
ピシリ
音がして私の目線と同じ高さにある針に亀裂が入った。
そこを始まりとしてピシ、パキ、ピシリと軽い音が続く。
細かい破片が私に降り注ぐが、傷は出来なかった。
亀裂の入った針に映る私の顔はぼやけて見えない。
突然、その針の間から白い手が伸びてきた。
男の人のゴツゴツとした手じゃない。
女の人の柔らかい手でもない。
小さな子供のような、まだ成長途中の大人になりきれていない手。
私の顔を鷲づかみするかのように大きく開かれた手に、何故か私は動じなかった。
とん、指先が私の額に触れた。
『冷たい』
額にじわりと広がる冷たさに言葉が漏れる。
一″びっくりした?″一
そんな言葉が耳からではなく直接頭に響く。
その声は何処か楽しそうで、まるで悪戯が成功した時のようだ。
『──』
それに答えたはずの自分の声は聞こえなかった。
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_______________
『……ん』
息苦しさと圧迫感に瞼をゆっくりと開ける。
覚醒しきってない頭はぼんやりとしていて、何も判らない。
徐々に思い出してきて目だけで自分の周りを見てみると、ピッピッと規則的に音を発する機械が頭の横に置いてある。
枕の感触とシーツの手触り、体に乗せられている布団、それと…腕から伸びる細い管は点滴に繋がっている。
『……生きてた』
口はカラカラに乾いていたけど声が出ないわけじゃない。
今回ばかりは、流石に三途の川を渡ることになるかもしれないと本気で考えていたけれどなんとか生き延びたらしい。
まあ、地獄の針山に近いものは見たけれど…。
白い壁に白い天井、窓はない。
以前にも何度か来たことのあるこの場所。
『集中治療室か…』
マフィアの集中治療室。
もう一度部屋の中を見渡すと、心電図機器以外にも医療機器が沢山並んでいる。
医療に関しては専門外なので詳しいことは知らないが、流石首領が医者ということもあって揃えられているのは全て一級品ばかり。
私も過去に何度かお世話になっている。
『さて、どうしたものか…』
呼び出し釦を押そうと腕を伸ばした時、誰かが扉を開けた音がした。
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jumpcontrolbear(プロフ) - 砂漠のうさぎさん» コメントありがとうございます!なんと!!私の知らないところでこの作品の名前が上がっていたんですね!嬉しい限りです!!更新ゆっくりですが頑張っていきます!ありがとうございます! (2019年10月21日 0時) (レス) id: 34857aaa52 (このIDを非表示/違反報告)
砂漠のうさぎ(プロフ) - あるユーザーさんの紹介から飛んできて一気読みしました。原作の雰囲気を崩さないで新しいキャラが動いていて凄いと思いました。話の展開とか言葉のチョイスとかとても好みです…更新楽しみにしてます、頑張ってください!長文失礼しました (2019年10月20日 21時) (レス) id: ad3e66ea3f (このIDを非表示/違反報告)
jumpcontrolbear(プロフ) - 桜さん» コメントありがとうございます!!あけましておめでとうございます!!また動くみんなを見ることが出来ますね!相変わらずの亀さん更新ですがよろしくお願いします! (2019年1月5日 23時) (レス) id: 10ce31b7ea (このIDを非表示/違反報告)
桜 - あけおめです!今年ほ更新頑張ってください!作者さん文スト3期4月放送ですよ!来ましたよ!!いろいろと大変かもれませんが頑張ってください! (2019年1月5日 1時) (レス) id: c482d4ca60 (このIDを非表示/違反報告)
jumpcontrolbear(プロフ) - 桜さん» コメントありがとうございます!!番外編も読んでくださったんですね…(感涙)楽しんでもらえてなによりです!!亀更新ですが頑張りますので気長にお待ちいただけると嬉しいです! (2018年11月22日 9時) (レス) id: 10ce31b7ea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:だし丸 | 作成日時:2017年8月31日 11時