167針 ページ27
その間に考えるのは外の状況。
治くんは捕まり、探偵社の皆の状況は判らない。
私の元に来たのが普通の特殊部隊だったのが幸いだった。
もし、軍警の特殊部隊《猟犬》だったなら、あの状況で逃げ切るのは無理だったかもしれない。
十中八九治くんの元に行ったのは《猟犬》の誰かだ。
常人じゃ治くんを捕まえることなんて出来るわけがない。
そして政府が特殊部隊を動かしているということは、このタイミングに乗じて《天人五衰》も何かしら行動を起こすだろう。
治くんと私をマフィアの容疑で逮捕。
そして探偵社自体を何かしらの方法で拘束、或いは解体。
最も予想されるのは、探偵社が嵌められてテロ組織として扱われること。
そうすれば政府も軍も探偵社を敵として指名手配にでも掛けるはず。
『最悪だな…』
乾いた笑いと一緒に出た言葉は、私の不安を煽る材料にしかならなかった。
昇降機が止まって扉が開く。
降りて一歩踏み出したところで視界が揺れた。
咄嗟に壁に手をついて体を支えたが、上手く体に力が入らず前のめりになる。
『あ"……はァ…はァッ』
口を大きく開けて何度も息を吸った。
下を向いているせいで頭の傷から血が落ちるが、その量はどう見ても少ないとは云えない。
腕も脇腹も段々と感覚が薄れてきた。
『流石に…血が……。
限界かな……』
ズルズルと壁に背をつけながら腰を下ろす。
貧血と異能による疲労、そして痛みが一斉に私の身体を蝕む。
『ごほ、ごほっ』
喉の奥で咳をすると血がせり上がって吐き出した。
『満身創痍だなぁ…』
そんな自分を客観的に想像しながら苦笑するしかない。
頭がぼんやりとして視界が霞んでくる。
眠たいような、なんとも云えない感覚に抗いながら震える手で外套のポケットから携帯を取り出し、ある電話番号を押す。
秘密通路といい、この番号といい………出来れば使いたくなかったけど、背に腹は変えられない。
探偵社のこの現状を打破するには私の最も避けたい道を使う他ない…。
とはいえ、それまでに私が生きてればの話だけど。
何回かのコール音のあと電話の向こうから慌てた様子で私の名前を呼ぶ声がした。
『もしもし、実は今は秘密通路のハ−零伍に居て…出来れば迎えに──』
そこまで云って手から携帯が落ちた。
体が横に倒れ意識がぼおっとする。
電話の向こうで叫ぶ声が聞こえるのを最後に私の意識は途絶えた。
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jumpcontrolbear(プロフ) - 砂漠のうさぎさん» コメントありがとうございます!なんと!!私の知らないところでこの作品の名前が上がっていたんですね!嬉しい限りです!!更新ゆっくりですが頑張っていきます!ありがとうございます! (2019年10月21日 0時) (レス) id: 34857aaa52 (このIDを非表示/違反報告)
砂漠のうさぎ(プロフ) - あるユーザーさんの紹介から飛んできて一気読みしました。原作の雰囲気を崩さないで新しいキャラが動いていて凄いと思いました。話の展開とか言葉のチョイスとかとても好みです…更新楽しみにしてます、頑張ってください!長文失礼しました (2019年10月20日 21時) (レス) id: ad3e66ea3f (このIDを非表示/違反報告)
jumpcontrolbear(プロフ) - 桜さん» コメントありがとうございます!!あけましておめでとうございます!!また動くみんなを見ることが出来ますね!相変わらずの亀さん更新ですがよろしくお願いします! (2019年1月5日 23時) (レス) id: 10ce31b7ea (このIDを非表示/違反報告)
桜 - あけおめです!今年ほ更新頑張ってください!作者さん文スト3期4月放送ですよ!来ましたよ!!いろいろと大変かもれませんが頑張ってください! (2019年1月5日 1時) (レス) id: c482d4ca60 (このIDを非表示/違反報告)
jumpcontrolbear(プロフ) - 桜さん» コメントありがとうございます!!番外編も読んでくださったんですね…(感涙)楽しんでもらえてなによりです!!亀更新ですが頑張りますので気長にお待ちいただけると嬉しいです! (2018年11月22日 9時) (レス) id: 10ce31b7ea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:だし丸 | 作成日時:2017年8月31日 11時