【文豪ストレイドッグス】蜂の在り処 4章

154針 ページ12

Aは太宰、国木田と別れ自分のバイクに乗り林の周辺を走らせていた。





「谷崎君、廃坑周辺から逃走する人影は？」




耳の通信機から太宰の声がする。





「太宰さんとAさんの云う通り上空から見張ッてますが、誰も……」





Aは道端でバイクを停めて上空を見上げる。




遠くの方で小さなヘリコプターが空を迂回しているのを見つけた。




『街は探偵社とマフィアが目を光らせているから奴はこの潜窟に籠る他はない。


漱石殿が造った黄金の好機、潰すわけにはいかない……』




Aは独り言のように呟いた。




その時突然通信機から谷崎の声が響いた。




「廃坑北部から車が出てきました！」



「一台じゃありません、二台…三台も！」



谷崎と共にヘリコプターに乗る賢治も続けて云う。




「きっと逃走用の車両です。


今直ぐ地上に連絡して追跡を！」




「無視だ」



「え！？」




太宰の言葉に谷崎は聞き返す。




「私達の手製を削ぐ囮だ」



「でも本物かも…囮と断じる根拠は何です？」



「私ならそうするから」





太宰のハッキリとした口調に谷崎は判りました、と答えた。



しかしその直後、様々な方角から幌車や武装兵が現れる。




それでも太宰は全てを無視させる。




『………』




Aは何も云わずその会話に耳を傾けていた。



そして徐ろに座席シートの中から携帯用パソコンを取り出し操作する。




その間にも会話は止まらなかった。





「太宰さん！

国籍不明の戦闘ヘリが東から接近中！


若しこれに乗って脱出されたらボク達の装備では追い切れません！」




「ヘリ……………奴の思考………とすると」



太宰は顎に指を当て考え込む。




「谷崎君、今地上に人影は？」



「え？今ですか？

いえ、特には……」



「いえ、一人…麓近くに登山客らしき人が！

遮光帽子で顔は見えませけど西方向にのんびり散歩を」



賢治の言葉に太宰は目を鋭くさせた。



「それだ」


「え？」




「全員でその登山客を拘束、森さんの兵も動かせ」




直ぐに登山客の周りをポートマフィアの者達が囲んだ。









「太宰さん！違います！

登山客は喉を潰され手枷を嵌められています！

ドストエフスキーではありません！！」




「ッッッ！？」





Aは太宰の息を呑む音を聞いて必死に動かしていた手を止めた。




Aは口の端を引き締めて






『治くん！見つけたッ！！』



そう叫んだ。

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