【文豪ストレイドッグス】蜂の在り処 4章

153針 ページ11

No side

やがて幌付車はどこかへ到着し停った。



「着いたぞ。」



運転席から国木田が云う。




「凄い数の見張りが……」



炭鉱の中へと続く入り口には武装した男達が何人もいた。




「全員音声無線持ちだ、戦えば敵本部が気付く。」




『…その上、生命信号まで一分毎に本部に送信している。

入口の感知器は谷崎くんの幻像異能対策だよ。


一つでも反応すれば…敵首魁は逃走、捕獲の好機は二度と来ない』




太宰の横から顔の青いAがひょこりと顔を出して説明する。



「Aさんッ！もう大丈夫なんですか？」




『いや、まだちょっと気持ち悪いけど、気にしなくていよ』



Aは軽く笑いながらまた目線を炭坑の方に戻す。




『とにかく、今回の作戦は倒すことはもちろん、出会うことも感ずかれることも駄目。

緊張させることも駄目だよ』



Aの言葉に敦は不安を隠せなかった。





その時、バタンと音がして芥川が歩いて行く。




「！おい、芥川…」



「人虎、二点のみ記憶せよ。

遅れれば捨て置く、邪魔すれば殺す。

…善いな」




芥川は敦の方を少し見ると、羅生門で自分の体を持ち上げ入口の真上へと上がった。



そして穴を開けて中へと入っていった。




入口の中へ降り立った芥川はもう一度敦を見ると奥へと歩き出す。



「あ、置いてかれた」



「あ！」




遅れに気がついた敦は幌付車から慌てて降りる。



「僕も行ってきます！」




「だが敦、お前如何やって」




敦は地面に両手をつき姿勢を低くする。



所謂、クラウチングスタートの様な体制になる、





敦が目を開くと足が一瞬で虎化し、彼の体は弾丸のように弾き飛ばされた。




入口の見張り達もその速さにより気付くことなく、敦も炭坑の中へと無事に潜入することに成功した。





「虎の脚力加速で感知器どころか見張りの目すら″抜いた″のか、敦の奴何時の間にあれ程の」




『さて…私達も負けていられません』



国木田の感心する言葉に続けるようにAが身を乗り出す。



「経始めようか」




太宰は薄く笑った。



『上空では谷崎くんが見張ってます、私達は地上を見張りましょう。』




「ッ！！……あぁ……。」




国木田はAを見て、背筋に寒気が走ったのを感じた。




先程までの和やかな目ではなく、冷徹な光を灯したA。




その表情は今までにないほど殺気立っていた。

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